デイリーコメントー相互関税を巡る混乱で米ドルと米株価急落

投稿日: 2025年4月4日19時16分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・関税を巡る混乱で、昨日の米株価は2020年のコロナ禍以来最悪のパフォーマンス
・米利回り上昇、米国債市場下落で米ドルは6か月ぶりの安値更新
・本日の米雇用統計とFRB議長の講演を前に世界の株価下落は若干改善
・OPECプラスが増産量追加で原油価格下落、ゴールドは安全資産ラリーの中後退

相互関税のショックが市場全体に響き渡る

2日に発表されたトランプ大統領による相互関税の内容を米株式市場が引き続き精査する中、昨日の世界市場は混乱が続きました。相互関税の水準が大方の予想よりはるかに高かったことから、世界的な景気後退への懸念を煽り、投資家にとっては「開放日」とはならなかったと言えるでしょう。

米国では、急速な景気後退は少なくても確実となっているようで、長期にわたる不確実性だけでなく、トランプ大統領が今後数か月間で、貿易交渉に応じて発表済みの関税率を引き下げるとしても、高い関税はしばらく続きそうです。

トランプ大統領による保護主義政策の長期的な影響が現れるには数年かかるかもしれず、世界的なサプライチェーンや貿易の流れを混乱させる可能性があります。来週から本格化する第1四半期での決算報告を前に、この懸念が高まっており、最初の亀裂が米経済に現れるかもしれません。

一方、昨日の米株式市場は2020年のコロナ禍以来最悪のセッションとなりました。S&P500 は4.8%下落し、2024年8月以来の安値となり、ナスダック100は5.4%も急落しました。

対象国から「驚くべき」オファーがあれば交渉も示唆

しかし、本日は多少売りの動きも緩和しているようで、トランプ大統領が関税の一部を引き下げることに前向きであると示唆したことによるのかもしれません。トランプ大統領は昨日、報道陣に向けて、もし関税対象国が「驚くべき」条件を提示する場合は、報復処置について考え直すとし、相互関税が米国に「交渉のための偉大な力」を与えていると主張しました。

しかし、トランプ大統領は医薬品と半導体への業種別関税が今後発表されることを示唆したことから、これらの発言によって、わずかなサポートになったにすぎませんでした。

相互関税が今後どのように展開していくにせよ、特定の業種への関税は交渉の余地はなさそうです。トランプ政権が公約として掲げる減税を実施するには、数十億ドルを調達する必要があるとの事実とは別に、トランプ大統領が「アメリカを再び偉大にする」とのメッセージをどれほど強く願っているかを考慮すると、業種別関税を撤廃することはかなりの妥協となるでしょう。しかし、米株価が引き続き下落し続ける場合、また考え直すこともあり得ます。

本日の米雇用統計とFRB議長の発言に注目

近い将来において、FRBが状況改善のために金融政策により相場を支えるとの「FRB プット」も今回は頼みの綱になりそうにありません。FRBパウエル議長は、本日15:25(GMT)に講演する予定で、米経済がスタグフレーションのリスクにある現在でさえ、おそらく様子見姿勢を維持すると見られています。

今週のADPによる雇用件数とISMサービス業PMI指数は、今週前半に発表されたISM 製造業PMI指数に比べて、いくらか明るい材料となりました。本日のパウエル議長の講演前に発表される米雇用統計が引き続き米労働市場について警笛を鳴らすような内容とはならない場合、パウエル議長がこれまでの姿勢を変える必要はありません。しかし、市場は何らかの心強い言葉を切望しており、米株式市場の反発となることも否定できません。

米ドル下落続く

今後の不確実性の中、為替市場では米ドルが急落しています。主要通貨に対するドル指数は昨日6か月ぶりに低い水準まで下落し、ユーロは一時的に1.11ドルを突破、日本円も1ドル145円18銭を更新するなど、米ドルに対してともに上昇しました。

イングランド銀行やオーストラリア準備銀行、そしてニュージーランド準備銀行といった中央銀行による利下げ観測が高まり、これらの通貨に圧力となっているため、米ドルは本日多少回復しているようです。

さらに、リスクオフセンチメントもようやくリスクに敏感な通貨である豪ドル、NZドルに反映し始めています。豪ドルとNZドルはともに本日、米ドルに対して約2%下落しています。

米国債上げ拡大でゴールドど原油に圧力

国債は現在のリスク回避から予想外に恩恵を受けており、特に米国債は上げ幅を拡大しています。そのため、米10年物国債利回りは10月以来初めて4.0%を下回りました。景気後退のリスクが完全に織り込まれているのかはまだ明らかではありませんが、特にトランプ関税政策がどれほど流動的であるかを考慮すると、米国債利回りがさらに低下し続ける可能性があります。

一方、ゴールドは後退し、3,100ドルを下回って、3,080ドル辺りまで下落しています。トランプ大統領による関税発表を前に、投資家がゴールドの買い占めをしていたため、相互関税からゴールド他の貴金属が除外されたことがこの下落の要因と見られます。

しかし、原油先物は今週最も下落し、原油需要の見通し悪化に加えて、OPECプラスが昨日、予想以上に石油増産を発表したことも影響しています。OPECプラスの国々は、5月から、計画の3倍以上にもなる日量41万1千バレルを追加生産することに合意しました。

WTI原油先物とブレント原油先物はともに本日下落幅を拡大しており、約3.5%の下落で、7%から8%の週次損失となっています。