デイリーコメント ―相互関税発表の「開放日」を迎え、米ドルと株価急落

投稿日: 2025年4月3日19時14分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

• トランプ大統領が相互関税を発表:全ての国が対象
• EU、中国、日本が大打撃を受け、世界的な景気後退の恐れ
• 貿易戦争が一段と激化し、リスク資産と米ドル売りが進行
• 米先物は3%以上の急落も、ゴールドの上昇は一服

トランプ大統領は大規模な相互関税を発表

トランプ大統領は昨日、ホワイトハウスのローズガーデンで新たな関税の対象となる国々の全一覧を発表し、自身が「開放日」と称する日を祝いました。懸念されていた相互関税発表は予想されていた中でも最悪のものとなり、今回のトランプ大統領による貿易攻撃において、免除される国は一つもありませんでした。

トランプ大統領はすべての国に対して一律10%の関税を課すことを発表しましたが、60カ国にはより高い関税が課されます。トランプ大統領はすでに隣国であるメキシコとカナダからの輸入品のほとんどに25%の関税を課しているため、今回の相互関税からは対象外となりました。

鉄鋼やアルミニウム、自動車など、分野別で追加関税を課す品目については、二重に関税が課されることはありません。しかし、トランプ大統領がすでに20%の関税を課している中国には、このような免除措置は一切適応されません。米国に輸入される中国製品にはさらに34%の追加関税が適応されることになり、合計で54%の関税が課されることになります。

相互関税緩和への期待が打ち砕かれ、米株価下落

アップルやナイキなど、今回の相互関税の影響を受けた国々に大きな製造拠点を持つ企業の株価は時間外取引で急落し、一方でアジアとヨーロッパの株式市場も本日下落しています。

S&P500とナスダックのEミニ先物は3.0%以上下落し、ダウ先物は2.5%とやや緩やかに下落しました。

この下落は、昨日の取引終了時点ではまだ相互関税がより穏やかなものになるとの楽観的な見方が一部に残っていた中で、トランプ大統領の相互関税発表前に市場がプラス圏で引けた後に生じたものです。

しかし、一律10%の関税が4月5日に発効し、さらに高い関税は4月9日に適用される予定であるため、交渉の時間はほとんど残されていません。たとえ今後数ヶ月のうちに関税の一部が軽減されたり、完全に免除されたとしても、今後数日間で発動される関税の急激な上昇が米国経済に与える即時的な影響は避けられないでしょう。

明日の雇用統計発表を前に、景気後退リスクから米ドル下落

トランプ大統領の相互関税に関する発表が米国経済に与える影響への懸念は米ドルにも反映され、景気後退懸念から下落しました。投資家はFRBによる年内の合計利下げ幅を0.80%に引き上げ、0.25%の利下げを3回実施することを完全に織り込みました。

今回の関税がインフレ加速となる潜在的な影響を考えると、この見方はあまりにも楽観的に思えます。たとえこれが最後の大規模な関税決定であり、消費者に影響を及ぼす物価上昇が一過性のものである可能性が高いとしても、米労働市場が急激に悪化しない限り、FRBは利下げを見送るでしょう。

金曜日に発表される非農業部門雇用者数(NFP)は、今週の米経済指標がまちまちの結果となっているため、関税が発効する前の米労働市場の状況を見極める重要な手がかりとなるでしょう。昨日のADP雇用者数は予想を上回りましたが、低調なISM製造業景気指数(PMI)の結果とは対照的でした。ただし、本日発表のISM非製造業PMIが、より明確な見通しを示すでしょう。

ユーロとポンドが急騰、豪ドルとNZドルは追随できず

本日ユーロは1%以上上昇し、対米ドルで1.10台にあと一歩というところまで来ています。EUの20%の関税率は、ベトナムや中国と比較すると、欧州の輸出業者にとってはかなり良い結果だったと言えるでしょう。英国への関税率はさらに軽く、輸出品は一律10%の関税率に該当し、ポンドは1.31ドル台まで急騰しました。

トランプ政権の相互関税の計算方法は、米国の各国に対する貿易赤字の規模に基づいており、これにより勝者と敗者を生み出しています。

しかし、安全資産である円とスイスフランは、日本とスイスに対する高い関税からの影響を受けず、最も上昇しています。一方で、オーストラリアとニュージーランドは一律10%の関税対象であるにもかかわらず、本日、豪ドルとNZドルは控えめな上昇にとどまっています。

ゴールドの上昇は一服、原油は下落

世界的な景気後退への懸念が、暗号通貨を含むリスクに敏感な通貨に圧力を与えている可能性が高いようです。トランプ大統領の貿易政策に対する過激な姿勢は、世界のサプライチェーンを崩壊させ、グローバリゼーションを逆行させる脅威となっています。

これらすべてがゴールドの上昇にさらに拍車をかけるはずですが、ゴールドは本日未明に3,167.57ドルの新記録を更新した後、現在は少しずつ下落しています。トランプ大統領の「開放日」を迎えるにあたって、ゴールドは過剰に買われているように見えたため、強気派は一息ついた可能性があります。

一方、原油先物は、トランプ大統領の貿易戦争による世界的な需要減退への懸念や、本日から始まるOPECプラスの月例定例総会で増産計画が確認されるとの予想から、3%以上も急落しています。