デイリーコメントートランプ関税を巡る不確実性の中、リスクラリーは勢い維持に苦戦

投稿日: 2025年3月25日19時58分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・米株価反発も世界の株式市場は恩恵受けられず
・今後のトランプ関税について混乱の中、米ドル続伸
・トランプ大統領はベネズエラ産石油などに二次関税発表で原油価格上昇、ゴールドも上昇

米国の相互関税を前に、市場は安堵と懸念の混乱

昨日の米株式市場は2週間以上ぶりの高値を更新して終了しましたが、本日は、世界の株式市場において、強弱まちまちのスタートとなったことから、前向きなセンチメントを維持するのに苦労しています。トランプ大統領が来週発動予定の相互関税には一部の国は免除される可能性があるとし、相互関税が当初想定されていたものよりも臨機応変となることが示唆されたため、昨日の米株価上昇となりました。

S&P500は1.8%上昇し、ナスダック100は2.2%上昇しました。しかし、アジアの株価指数はこの米株価上昇からそれほど恩恵を受けることができず、トランプ大統領がベネズエラ産石油とガス購入国に対して二次関税を課すと発表したため、特に中国株は圧力を受けました。

トランプ政権によるベネズエラ産石油購入国への関税制裁発表で原油価格上昇

中国はベネズエラ産石油の主な輸出先であるため、トランプ政権によって既に課せられている関税に加え、25%の関税が課せられるリスクに直面しています。

最新のトランプ政権によるこの二次関税が世界的な石油供給の打撃となるとの懸念から、昨日の原油先物は1%以上も急騰し、4セッション連続で上昇しています。

トランプ大統領は輸入自動車への関税実施認める

市場の懸念材料となっているのは、この二次関税だけではありません。トランプ大統領は相互関税に加え、もっと多くの業種を対象とした部門的関税の実施を認めたため、予定されている相互関税が当初の予想よりも規模が縮小されるのではとの期待は打ち砕かれました。

トランプ政権は自動車産業を優先としており、輸入される自動車を対象に新たな関税を数日中にも発表する可能性があります。トランプ政権は各国との交渉に前向きな態度を示しており、何らかの課税が一部遅延されるか、または撤回される可能性があるものの、トランプ大統領は、ほとんどの相互関税が発動する4月2日の発動日を「開放日」として祝う準備をしています。

好調な米サービス業PMIで米ドル上昇

しかし、しばらくの間は、トランプ大統領の軟化姿勢により、最近市場が直面せざるを得なかった不確実性からはいくらかの安堵感となりました。さらに、昨日の米サービス業PMI(購買部協会景気)指数が予想を上回ったことも市場のセンチメント向上をサポートしました。S&Pグローバルによる3月のPMI速報値は54.3まで急上昇し、景気後退への懸念が緩和しました。

米ドルはほとんどの主要通貨に対して上昇し、主要通貨に対するドル指数は3週間ぶりの高値を更新しました。さらに、米国債利回りもここ数日で上昇しており、アトランタ連銀ボスティック総裁も昨日、FRBが年内にあと1回以上の利下げを行うとは思えないと言及したことで、この上昇トレンドが裏付けされました。

本日は、FRBクーグラー理事とニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁が講演する予定で、米経済データに関しては、3月の消費者信頼感指数が注目となるでしょう。

日銀総裁の発言で円高へ

昨日、日本の製造業購買担当者景気指数が予想を下回り、円安となりましたが、日銀植田総裁によるタカ派発言から恩恵を受けて、本日の日本円は昨日の損失分の一部を取り戻して、いくらか安定しています。植田総裁は、参院財政金融委員会での答弁にて、食料品の価格上昇と賃金の伸びによる基調的なインフレへの影響について警告を発しました。

中国政府による景気刺激策への期待から豪ドル上昇、ゴールドは上昇を再開

ユーロとポンドは米ドルに対して横ばいとなっており、日本円を除いては、豪ドルのみが顕著に上昇しています。中国政府が木曜日に景気刺激策の概要を発表するのではとの期待がリスク資産に敏感である豪ドルのサポートとなっています。

一方、トランプ関税の行方の不確実性とともに、米国とロシアによるウクライナ紛争停戦合意が大きな進展をしていないように見える中、ゴールドは昨日の下落を反転させて、3,020ドルを突破して上昇しています。