デイリーコメントー引き続きトランプ大統領の言動がリスクセンチメント悪化に

投稿日: 2025年3月12日20時11分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

• トランプ大統領のかく乱は続く、鉄鋼・アルミニウムの関税は導入開始
• 本日の焦点は米CPI発表とカナダ中銀の政策金利に
• 好調な米インフレとなった場合、米ドルを押し上げる可能性も
• 円は下落も、春闘での賃上げ合意がタカ派的な日銀を支持

鉄鋼・アルミニウム関税の導入開始も先行きは依然不透明

米大統領就任から約2ヵ月が経過した今も、トランプ大統領が最大のリスク要因であることに変わりはありません。トランプ大統領の一貫性のない関税戦略と攻撃的な言動は、市場、特に米国株に引き続き影を落としています。月曜日の悪夢のようなセッションに続き、昨日はトランプ大統領が「発動と撤回」を繰り返す関税政策で再び市場参加者を混乱させ、リスク選好が再び大きな打撃を受けたため、米株価の小幅上昇への期待は急速に消えました。

特に、カナダとのいたちごっこが続きました。トランプ大統領は、カナダの輸入品に対する鉄鋼とアルミニウムの関税を50%に引き上げることで、カナダを再び追い詰めようとしましたが、オンタリオ州首相が発表済みのエネルギー価格引き上げを停止した後に、50%の関税を撤回しました。注目されていた鉄鋼とアルミニウムの輸入に対する25%の関税が始まりましたが、この関税が維持されるのか、免除措置が適用されるのか、はたまたこの関税が4月2日まで再び延期される可能性があるのかは誰にも予測できません。

その結果、今週の米株価はナスダック100指数を筆頭に、依然として下落しています。一方、米ドルは先週の大暴落から回復しようとしています。サウジアラビアで開催されている米・ウクライナの高官協議がウクライナ紛争の和平に向けて進展し、ユーロを押し上げたにもかかわらず、米ドルは他の主要通貨に対して若干の上昇を記録しました。

本日の焦点は米CPI指数へ

こうしたなか、3月19日のFOMC会合を1週間後に控えた本日、2月の米インフレ報告が発表されます。エコノミストは現在、総合指数が前年同月比2.9%増、コア指数が同3.2%増と、いずれも1月の数字を下回る小幅な鈍化を予想しています。

最近のISM製造業/サービス業景況指数の「支払い価格指数」と、通常CPIを平均3~7ヵ月先行すると考えられている生産者物価指数(PPI)が現在は上昇傾向にあることから、本日上振れサプライズとなる可能性が高まっています。その反面、2月の原油価格は、2024年2月の緩やかな前年比2%上昇と比べ、前年比11%下落しているため、下振れサプライズとなる可能性もあります。

市場は現在、2025年の利下げ幅を0.77%と織り込んでおり、最初の利下げは6月と予想しています。米株安が続き、米景気後退への懸念が高まっていることから、本日のインフレ報告が軟調であれば、来週の会合でFRBがハト派的な発言をする可能性があるでしょう。逆に、再び堅調なインフレ報告であれば、インフレが新たな上昇トレンドに入るかもしれないというタカ派の懸念が強まる可能性があるでしょう。堅調なインフレとなる場合は、リスクセンチメントに悪影響を与えるかもしれませんが、米ドルを若干押し上げる可能性もあるでしょう。

米消費者物価指数(CPI)は本日12:30(GMT)に発表されます。トランプ大統領は発表前までは静観し、発表後により積極的な姿勢を見せる可能性があります。結果がどうであれ、トランプ大統領はおそらく、FRBが金利を高く維持しすぎたことが米国の成長を阻害していると批判するでしょう。

カナダ中銀は0.25%の利下げを決定となるか

本日のカナダ銀行による金利政策会合では、最近の動向により、7回連続で利下げを行わざるを得ない可能性を高めています。最近のデータは、2月のカナダの雇用統計が芳しくなかったこと、インフレ率が目標に近い水準にとどまっているから、追加利下げを支持するものがほとんどですが、カナダ中銀の最大の懸念は、米国との貿易関係の悪化です。

カナダ中銀がタカ派的な利下げを選択するのか、それともハト派的な利下げを選択するのかが会合前の大きな焦点となりますが、ハト派的な利下げのみがマックレム総裁の選択肢にあるようにみえます。そのため、ハト派的な利下げはカナダドルにとって更なる逆風となる可能性がある一方で、可能性の低いタカ派的な利下げを行うとしても、現段階ではカナダドルにとってあまりプラスにならないと予想されます。

円は下落も、日銀は春闘での賃金引き上げ合意を好感

円は対米ドルで直近の上昇分の一部を還元したものの、春季労使交渉(春闘)からのニュースはポジティブな内容のようです。大手自動車企業は賃金引き上げ合意を発表し、焦点は日本最大の労働組合である連合に移っています。日銀はおそらく賃金面での進展に満足しており、来週の会合でややタカ派的な姿勢を取る準備が整いつつあると考えられるでしょう。