デイリーコメントートランプ関税は二転三転で米株価の下落続く

投稿日: 2025年3月7日19時32分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・トランプ関税はメキシコとカナダに対してさらに除外対象を拡大
・米株価と米ドルはともに続落
・ECBは昨日利下げ決定もユーロは引き続き上昇基調
・原油価格と暗号資産に引き続き圧力

トランプ関税は二転三転で市場への圧力続く

トランプ大統領が関税に関する発言を訂正するなど二転三転する中、米株式指数と米ドルは共に、引き続きかなりの圧力を受けています。昨日トランプ大統領は、トランプ関税の一部適用外として、2018年に締結された米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)準拠した製品についても、4月2日まで25%の関税賦課を延期することを決定しました。この結果、メキシコとカナダからの輸入品の大部分について、主に中国とEU対象とする相互関税発動が発表されるまで、ほぼ1か月関税対象外となります。

貿易制約は、リスク選好度と経済成長の勢いの面で額面通りマイナスに働くことになります。 しかし、トランプ大統領が関税発動の発表数日後に発言内容を撤回するといった現在の手法は、一環した戦略が欠如していることを示すため、市場のセンチメントにとってはさらなる悪影響となっています。市場は引き続き混乱しており、今週の米株価指数は、FRBが最初の緩和サイクルを進めようとしていた2024年9月最初の週以来最悪となる週次パフォーマンスに向かっています。ナスダック100指数が特に下落しており、ラッセル2000指数も大幅は下落を記録しています。

本日の米雇用統計に注目

市場がトランプ関税の行方に注目する中、本日の焦点は米経済カレンダー、特に2月の米雇用統計となります。1月非農業部門雇用者数が14万3千件とまずますの増加となったことから、エコノミストは本日の非農業部門雇用者数を3万件増加から30万件増加の範囲で、16万件の増加と予想しており、また民間部門での雇用者数は14万2千件に急増することが予想されています。平均賃金の伸びは前年比4.1%、失業率は前年比4%と横ばいの予想となっています。米労働市場に関する今週の経済データでは、月間ISM企業調査での雇用指数サブインデックスや先週の失業保険申請件数などが発表され、大方好調であったため、本日の雇用統計も上振れサプライズとなる可能性がわずかにあります。

本日の米雇用統計は、FRBにとっては政策決定上で重要な経済データとなり、トランプ関税戦略の中で、パウエル議長らが金利政策方針を立てる際に有用になり得ます。本日の米雇用統計が軟調となり、来週の米CPI指数も予想を下回るような場合は、今後2回のFOMC会合までに利下げが行われる可能性が確実視される可能性があります。市場は現在、年末までに合計で0.75%の利下げが実施されると織り込んでおり、最初の0.25%の利下げは6月18日のFOMC会合決定と予想されています。パウエル議長、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁、ボウマン理事、そしてクーグラー理事が、本日の米雇用統計後に講演する予定で、注目となるでしょう。

ECBは昨日追加利下げ決定も次の会合では金利据え置き示唆

ECBは昨日、0.25%の追加利下げを発表しましたが、全体のトーンとしては、一連の連続利下げを受けて4月の会合では金利を据え置くことが示唆されました。ECBは推定中立金利水準に近づいており、またユーロ圏諸国は、国防費増加を理由に、大幅な財政支出増加に向かっていることから、この方向性も不思議ではありません。

ユーロ圏の財政スタンスの明らかな変化より、ユーロは引き続き恩恵を受けて上昇しており、ユーロ/ドルは1.0830まで上昇し、世界金融危機で株式市場が急落した2009年3月中旬以来の週間上昇幅を更新しています。同様に、ドイツのDAX40指数も2024年12月初旬以来最高の週間パフォーマンスに向かっています。今週のDAX40指数は、S&P500指数のパフォーマンスより7.5%も上回っており、この株式市場による大差は、コロナによるパンデミックが発生した2020年3月以来最大となり、現段階では、市場が欧州株を好んでいることが強く示唆されています。

原油価格は小幅上昇、戦略的ビットコイン準備金への失望から暗号資産下落

本日の原油価格は上昇して、市場が新しい市場バランスを見つけようと試みる中、66.95ドルから67.80ドルの重要なゾーンが再度試されています。1月15日から始まった原油価格の下落幅は拡大し続け、主に世界的な原油生産の成長見通しへの懸念を裏付けています。本日の米雇用統計が好調となる場合、原油強気筋にとっては、いくらか安心材料となり得ますが、トランプ関税に関する報道は、引き続き原油市場にとっては大きな逆風となっています。

また、トランプ大統領によるビットコインの戦略的備蓄は、新たに設立された準備金が米政府が既に所有しているビットコインが資本となっていることから、主要な仮想通貨の購入急増との期待に反して、暗号資産市場での新たなラリーの火付け役とはいきませんでした。本日のビットコインは重要な9万ドル台を下回って取引されており、他の主要仮想通貨も今週は2桁の損失を被っています。