デイリーコメントートランプ大統領の発言に市場での調整続く

投稿日: 2025年1月22日19時01分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・トランプ大統領による関税に関する発言が焦点に
・米新政権のAIへの投資発表でリスクセンチメント向上
・米ドルは引き続き下落基調、金曜日の日銀政策会合に注目
・ゴールド上昇続く、原油価格の調整のペース加速

トランプ第2次政権発足で米ドルは下落基調

トランプ大統領が、任期である今後4年間の計画を引き続き明らかにする中、米ドルは後退したままとなっています。トランプ第1次政権でも目標であったメキシコとカナダへの関税導入発表を受けて、大統領就任が比較的静かにスタートするとの市場の期待は打ち砕かれました。トランプ大統領は新たな関税導入に関して、中国とEUに焦点を当てています。

トランプ大統領と習主席との電話会談によって、貿易制約に関する決定は先送りとなったように見えましたが、昨日トランプ大統領が中国への10%の関税を課す意向であることを発表したことで、他国との貿易関係を犠牲にしてまで、米経済を支援するとの選挙前の公約を撤回しないことを市場に知らせることになりました。関税の水準については、11月の大統領選前に言われていた60%に比べるとかなり低い水準ですが、中国がルールに従わない場合、すぐにでも引き上げる可能性もあることから、トランプ大統領は開始点としては適切と見ているようです。

同じく、EUも次の関税の対象となっており、トランプ大統領が日頃から、EUがロシアのガスと石油を購入していることに批判的であるとの事実を踏まえると、この方針は驚くべきものではありません。しかし、2017年から2020年までの間に比べると、欧州は最近、エネルギー需要をロシア以外に移行せざるを得なくなっています。このEUの状況は、トランプ大統領による「掘って、掘って、掘りまくれ」との戦略に基づく買い手を確保するのに整合しています。原油価格が7カ月以来の高値である80.59ドルまで上昇した後急落していることも注目に値します。

関税導入に関する発表の次なる重要な日付は2月1日となるようで、1月29日に予定されている次回FOMC会合決定に影を落としています。貿易制約によって、米インフレが加速して、世界経済の成長が鈍化することへの懸念が高まっていますが、FRBとしては、現段階では「様子見」のアプローチを取り入れて、関税の動向を見守るしかないようです。

市場のセンチメントは強弱まちまち

市場での強弱まちまちの反応は続いており、トランプ大統領がAIへの巨額な投資を発表したことで、リスクセンチメントは向上して、株価指数が上昇しました。ドイツ経済の暗い見通しと2月の解散総選挙にもかかわらず、ドイツのDAX40が1月に5.7%も上昇しており、欧州指数が全体の株価指数の上昇を牽引しています。同様に、1月の暗号資産市場は大幅な上昇が更新されており、特に米国のXRPとソラナが上昇しています。ビットコインは今月13%上昇しましたが、イーサリアムは下落しています。

一方、トランプ大統領による関税に関する発言で、ゴールドはサポートされているようです。大統領就任式以来ゴールドは上昇を開始し、11月と12月の高値を既に突破して、2,750ドル付近まで上昇しています。昨年27%も上昇したゴールドは、今年既に5%上昇し、ほとんどの米株価指数よりも好調なパフォーマンスとなっています。

日銀は金曜日の政策会合にて利上げ決定か

こういった不安定な環境の中、日銀は金曜日の利上げ決定に向けて準備を進めています。市場は現在88%の確率で利上げを行うと見ており、最近の国内の経済データと春闘での賃金交渉に関する前向きなニュースからも利上げは適切と思われます。トランプ大統領が金曜日までに、貿易戦略を拡大したり、グリーンランドを「買収」したりしなければ、植田総裁は0.25%の利上げを発表し、日本円の必要とするサポートとなる可能性が高いでしょう。