デイリーコメントートランプ新大統領、カナダとメキシコに対して関税誓う

投稿日: 2025年1月21日19時34分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・トランプ大統領は就任初日に関税導入しないとの報道で米ドル下落
・その後、カナダとメキシコに対しての関税導入を言及して米ドルは反発
・株式先物は下落直後に回復
・トランプ政権を巡る不透明さからゴールド上昇、原油価格下落

トランプ第2次政権発足で米ドルは乱高下

1週間の通貨オプションボラティリティが予想したように、トランプ大統領の就任式前に米ドルはかなりの圧力を受けて下落し、トランプ大統領のスピーチ後、一晩でその損失分の一部が還元されるなど、就任式前後の数時間の米ドルはかなり乱高下しました。

トランプ第2次政権が発足初日から新たに関税を課さないとの報道もあり、この報道はインフレ加速を回避するために、段階的な関税導入を選択したとのこれまでの報道を裏付けたため、当初の反応を引き起こしました。

また実際に、トランプ大統領は就任式のスピーチにて、「大量の」関税を徴収する新しい機関を設立すると関税について言及したものの、どのように実行するかまでは述べませんでした。

トランプ新大統領はカナダ、メキシコ、中国に対して再度脅し

そうはいっても、昨日の米国時間の後半、つまり本日のアジアセッション開場まもなく、トランプ大統領はカナダとメキシコからの輸入品に対して約25%の課税を検討しており、この課税は2月1日に発表される可能性があると述べました。トランプ大統領はまた、中国がTikTok の米事業売却の取引に応じなければ、関税を課す可能性があると警告しました。

これらの発言を受けて、米ドルは反発し、カナダドルとメキシコペソは他の主要通貨に比べて大きく下落しました。そうは言っても、他の通貨が今後影響を受けないとは言えません。EUは米国に対してかなりの貿易黒字を計上しているため、トランプ大統領の大幅な関税の対象となっており、ユーロがさらに下落になりやすくなっている原因です。さらに、トランプ大統領は、全ての国に対する一般的な関税も再検討すると述べましたが、まだ準備段階に入っていないことも認めています。

これらの動きを全て考慮すると、トランプ大統領による大幅な関税導入は、5日後か10日後、または20日後か明らかではありませんが、おそらく大きな違いはないと見られます。インフレ再加速への懸念が再浮上する可能性もあり、市場はFRBによる利下げ観測を後退させました。FF金利先物によると、市場は現在、今年の合計利下げ幅を約0.40%に織り込んでいます。

株式先物下落、ゴールド上昇、原油価格下落

昨日の米株式市場はキング牧師の日により休場でしたが、株式先物はトランプ大統領による関税の脅しを受けて下落しました。しかし、これらの損失分の大部分はすぐに取り戻したことから、米新政権による新政策案は米株式市場にとってはマイナスだけではないことが裏付けされました。トランプ大統領による法人税減税と規制緩和の公約によって、この関税関連の損失分が限定的で短命に抑えられたのかもしれません。

昨日のゴールドは反発し、米ドルが一晩で回復した後でさえ、本日も上昇幅を拡大しています。これは、トランプ第2次政権がどれほど予想不可能であるかを経験した初日に、投資家が安全資産のポジションを増大させたためかもしれません。

大統領就任式を前に、ウクライナとの紛争終結に向けて、トランプ大統領がロシアへのエネルギー関連の制約を緩和させるのではとの期待から原油価格は下落しましたが、この下落はトレーダーによる利益確定の動きと重なったことも原因でもあるようです。トランプ大統領は石油とガスの掘削拡大を約束しており、「掘って、掘って、掘りまくれ」とのモットーを就任演説にて繰り返して強調しました。

本日はカナダCPI指数とダボス会議に注目

本日の経済カレンダーは、カナダのCPI指数が注目となるでしょう。予想を下回るCPI指数となる場合、来週のカナダ銀行による政策会合にて利下げが確実視されるかもしれません。また、ダボスでの世界経済フォーラムの年次総会において、本日はウクライナのゼレンスキー大統領とイスラエルのヘルツォグ大統領による演説も予定されているため、特に注目されるでしょう。