デイリーコメント ―トランプ次期大統領が関税政策を縮小との報道で米ドル下落

投稿日: 2025年1月7日20時18分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

•米紙ワシントン・ポストがトランプ次期大統領による関税政策縮小の可能性を示唆
•米ドルは下落、トランプ次期大統領による報道否定後も回復せず
•ドイツのインフレ再加速でユーロ上昇、ユーロ圏のインフレデータに注目
•ハイテク株が牽引し、ナスダックとS&P500が上昇

関税政策緩和報道を受け、米ドル反落

米紙ワシントン・ポストが、トランプ次期大統領はすべての国に対して関税を課す計画を検討しているものの、その対象は米国家安全保障と経済安全保障に不可欠と見なされる分野に限定すると報じたことで、米ドルは月曜日に下落しました。このインフレを再燃させかねない厳しい関税に対する懸念が和らいだことで、今年初の取引日に25ヶ月ぶりの高値をつけた米ドルは反落しました。

しかし、トランプ次期大統領はこの報道を否定し、記事の内容は誤りであり、関税計画は縮小されないと述べました。米ドルはトランプ次期大統領の発言を受け、やや反発しましたが、その後すぐに売り圧力に屈し、本日も下落傾向が続いています。

トランプ次期大統領は強硬姿勢を貫いていますが、投資家たちは、トランプ次期大統領の政策が彼の発言ほど厳しくなることはないだろうと期待を抱いている可能性があります。そして、そのような期待を裏付ける情報が出てくると、米ドルはさらに下落し、リスク資産がより多くの利益を得る可能性があるでしょう。

米利下げ観測に変化なし、金曜日の米雇用統計に注目

とはいえ、FF金利先物には影響は見られず、FRBによる年内の利下げは0.25%利下げが2回近くとなると見込まれています。

おそらくこれは、リサ・クックFRB理事が、米経済が非常に良好に推移していることと、インフレが予想以上に粘着性を示しているため、FRBはさらなる利下げに対して慎重であるべきだとの発言によるものかもしれません。つまりこれは、米ドルを上昇させ、FRBの金利政策の再考を促したのは、トランプ次期大統領の政策に対する懸念だけでなく、堅調な米国経済も起因しています。

そのことを考慮すると、投資家は米ドル売りを長く続けようとはしないかもしれません。今週はさらに多くのFRB当局者らの発言が予定されており、金曜日には重要な米雇用統計の発表が控えています。従って、FRB当局者とデータが、利下げに対しては慎重であるべきだという考えを強めれば、米ドルの下落は止まる可能性があり、これまでの上昇トレンドが再開する可能性があるでしょう。

ユーロ圏のインフレデータを控え、ドイツのインフレ再加速でユーロ上昇

昨日のユーロ/ドルの主な上昇要因は、トランプ次期大統領の関税に関するニュースだけでなく、ドイツのインフレ率が予想を上回ったことで、1.0340のキーゾーンを大きく上回りました。

ECBによる本年の利下げ幅は約1.10%相当でしたが、投資家は現在、1.0%と織り込んでいます。本日のユーロ圏消費者物価指数がドイツのインフレデータと似たような結果を示す場合、この利下げ幅はさらに縮小して、ユーロは上昇する可能性があるでしょう。

とはいえ、ECBとFRBの政策期待の乖離が依然として大きいこと、フランスとドイツの政局危機、トランプ次期大統領の欧州製品への関税政策をめぐる不透明感がユーロトレーダーにとって更なる重荷となっていることから、ユーロ/ドルの強気トレンドの逆転を予測するのは賢明ではないでしょう。

米株式を牽引するハイテク株

米株式は、ナスダックとS&P500が小幅ながら上昇し、ナスダックはトランプ次期政権による関税政策の緩和に関する報道がリスク買いを促し、1%以上上昇しました。

それに加え、エヌビディアやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)といった半導体メーカーは、マイクロソフトがAIデータセンター構築のために800億ドルを投資するという計画から恩恵を受け、上昇しました。これは投資家がAIによる将来的な経済成長をまだ完全に織り込んでいないことを示唆しており、そのため、FRBが利下げをより慎重に進めるとの見通しから生じる追加的な市場の後退は、限られたもので短命に終わる可能性が高いでしょう。

トランプ次期大統領の公約である大規模な法人税引き下げに加え、テクノロジー大手企業によるAI関連の報道が増えれば、米株価は未知の領域への上昇を再開する可能性もあります。