デイリーコメントー米経済データは強弱まちまち、FRBメンバー金利据え置き示唆で米ドル方向性模索

投稿日: 2024年10月11日19時01分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・米失業保険申請件数増加も米CPI指数は加速
・アトランタ連銀総裁は11月での金利据え置きの可能性示唆
・市場は11月のFOMC会合での利下げ支持で米ドルは横ばい
・原油価格とゴールドは上昇基調

米CPIと失業保険申請件数が急上昇も、アトランタ連銀総裁の発言が話題に

米国のインフレ率は、総合CPI指数、コアCPI指標ともにエコノミストの予想より年間で0.1%上昇し、上方サプライズとなりました。本来であれば、これらの結果は米ドルを押し上げ、米株安を引き起こすはずでした。しかし、ハリケーン「ヘリーン」の影響もあり、先週の米新規失業保険申請は2023年5月以来の高水準となり、米週間失業保険申請件数も増加しました。

米労働市場がFRBによる利下げ決定において要の指針であるため、市場は強い消費者物価指数(CPI)報告となっても、11月7日のFOMC会合でのFRBによる利下げが阻まれることはないだろうと考えたため、CPI発表後の市場の動きは短時間で終わりました。実際、市場予想では、次回会合で利下げを行わない確率は、新規失業保険申請件数の発表後、わずか7%にまで低下しました。

しかし、アトランタ連銀のボスティック総裁は、「データが適切であると示唆するならば、利下げを一時休止することは問題ない」と発言し、市場の見解に波風をを立てました。これは2日連続のタカ派的発言で、水曜日にサンフランシスコ連銀のデーリー総裁は「年内にあと1回か2回の利下げはあり得る」と述べ、間接的に11月に利下げを行わない可能性を示唆しました。

ボスティック総裁の発言を受けて米ドルは一時的に上昇しましたが、市場はFRBが次回の会合で利下げを行うとほぼ織り込んでおり、0.25%の利下げを発表するとの見方が強いため、すぐに下落に転じました。

本日は9月の生産者物価(PPI)指数の発表、またFRBのボウマン理事を含む少なくとも3人のFRB幹部が発言予定のため、FRBの利下げ予測に引き続き注目が集まるでしょう。ボウマン理事は、9月のFOMC会合決定に唯一反対し、タカ派として知られていることから、この機会に11月の会合で、金利の据え置きを主張するかもしれません。

原油とゴールドは並行して上昇

フランスと英国を中心に、停戦に向けた継続した要請が続けられている中、イスラエルとイランの紛争が続いていますが、原油は依然として好調を維持し、75.50ドル近辺で推移しています。同様に、ゴールドも2,600ドル水準を下回ることに失敗した後、力強く上昇しました。

中国からの需要がゴールドのパフォーマンスに重要な役割を果たしたかもしれませんが、同時に、中国の新たな景気刺激策の効果について市場が非常に悲観的であるため、原油の上昇の助けにはほぼなりませんでした。上海総合指数は、新たな景気刺激策の5,000億元のSFISEファシリティー(証券・ファンド・保険会社のスワップ制度)が恐らく不十分と判断されたため、本日も赤字で引けました。

火曜日の悲惨な記者会見に続き、土曜日と月曜日に2回の記者会見が予定されており、一部のアナリストは、中国政権は景気刺激策の数よりも、記者会見の数の方が多くなると茶化しています。しかし、民間企業のIKEAがさらなる中国の景気刺激策を求めていることから、現地の状況はおそらく現在認知されているよりも悪いと考えられます。

来週はポンドとユーロの動きに注目

来週のECBによる政策会合に向けてカウントダウンが始まる中、ユーロは米ドルに対して2024年1月以来最悪の月次パフォーマンスを更新しています。来週木曜日にECBがハト派の決定を行う場合、ユーロは特にポンドに対して下落幅を拡大する可能性があります。イギリスは、来週の火曜日に英雇用統計と水曜日に重要となる英CPI指数の発表があります。ポンドは、ここ最近下落基調でしたが、米ドルに対して今年2.5%上昇し、依然として2024年の最も強い通貨の一つとなっています。