デイリーコメントー地政学リスクによる原油価格高騰で米利下げ観測へのムード緩和

投稿日: 2024年8月27日18時30分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・リビアとガザ地区の地政学上の不安定さから市場は慎重ムードに
・原油供給への混乱への懸念から原油価格上昇、S&P500は下落
・中国消費者需要への懸念も重荷、ユーロ圏CPI指数を控え欧州株はプラスへ

地政学的リスクが原油の上昇に影響

原油供給の途絶に対する懸念が再燃するなか、投資家は今週の主要イベントを前に慎重な姿勢に転じたため、火曜日の株式市場はまちまちの動きとなり、米ドルはもみ合いとなりました。

原油先物は月曜日に急騰し、3日間の上げ幅を7%以上に拡大しました。イスラエルとヒズボラの交戦の激化と、週末のガザ停戦協議に大きな進展がなかったことで、原油はすでに値を上げており、強気への反転を示唆するダブルボトムのような値動きをみせています。

しかし昨日、リビア東部政府が国の生産量のほとんどを占める東部地域の油田を閉鎖するという発表したため、エネルギー・コモディティはさらに上昇しました。この「不可抗力」の宣言は、リビアの中央銀行総裁を解任しようとした人事を巡る、トリポリ政府との対立が背景にあります。

米経済データとエヌビディアの決算に注目

米株式市場は、先週金曜日のパウエル議長の講演後の上昇が収束しており、明日のエヌビディアによる決算報告を前に、S&P500とナスダックともに下落して取引を終えました。さらに、市場の焦点は、FRBによる利下げの時期から、利下げ幅に移行しており、今後の米経済データがさらに注目されるでしょう。

昨日の米耐久財受注が予想を大幅に上回ったことから、9月での0.50%の利下げ観測が後退しており、本日の消費者信頼感指数にも注目が集まります。しかし、金曜日の個人消費支出価格指数とコアPCE物価指数が、9月のFOMC会合への市場予想にとって、より重要な指数となるでしょう。

株式市場での回復はすでに開始か

アジアでは、オンライン小売業者Temuの親会社であるPDDホールディングスの株価が下落したことで、アジアの株式市場は下落しました。中国での消費者需要軟化への懸念が、7月に上昇した工業利益からのプラスへのシグナルに水を差しました。

しかし、ロンドンのFTSE100が鉱業株とエネルギー株に牽引されて堅調に上昇したことから、主要指数も上昇し、欧州のトレーダーは不安定な見通しを払拭しました。

米先物も緩やかな回復を示し、株式市場は大きな要因のないまま、再び上昇する可能性があります。

円安が米ドルを支えるもポンドとユーロは米ドルに対して上昇

為替市場では、主要通貨がほとんどレンジ取引となる中、米ドルが主要通貨に対してほぼ横ばいとなっています。唯一の例外は日本円で、全体として下落しました。この円安は、リスクセンチメントの改善のサインかもしれません。

欧州の取引では、米ドルが145円を超えて上昇しましたが、米ドルは他の主要通貨からは圧力を受けました。米ドルに対して、ポンドは1.3200ドルを超えて上昇しており、金曜日のユーロ圏のCPI指数速報値によって、ECBが9月に追加利下げを行う確率が高まる可能性がある中、ユーロは1.1170ドルまで小幅上昇しました。

一方豪ドルは、明日のアジアセッションでの月次CPI指数を前に、わずかに上昇したにすぎません。