マーケットコメント–米新規失業保険申請件数の好調な結果でリスクオンムード回復

投稿日: 2024年8月9日19時35分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • 米景気後退への懸念が一段と緩和され、米ドル上昇
  • 豪中銀総裁の発言を背景に、豪ドルが最も上昇した通貨
  • 米株価反発、原油とゴールドも上昇

米国の新規失業保険申請件数、過去約1年で最も減少

先週の新規失業保険申請件数の予想よりも好調な結果が追い風となり、昨日の米ドルは他の主要通貨に対してまちまちな値動きで終わりました。米ドルは安全資産である円やフランに対しては上昇を維持しましたが、リスク選好通貨に対しては落ち込み、豪ドルに対しては最も下落しました。

米国の新規失業保険申請件数は、前週の25万件から先週は23万3000件に減少し、ほぼ1年ぶりの大幅な減少となり、景気後退懸念がいっそう緩和されました。

投資家は労働関連の数字に非常に敏感なようで、これは先週の米非農業部門雇用者数が引き起こした混乱や、昨日の失業保険申請件数発表直後の価格変動からも明らかです。市場参加者は、年末までに約1.25%相当の利下げを見込んでいましたが、現在は1.0%程度と見ています。

とはいえ、9月に0.5%の利下げが実施される確率は75%と、依然として過度にハト派的な見方をしています。これは、週明けの統計が引き続き景気回復を示唆するものであれば、米国債利回りは反発幅を拡大し、米ドルの上昇が一気に加速する可能性があるでしょう。

豪中銀は必要に応じて利上げに踏み切る姿勢

市場でのリスクオンムード回復に伴い、リスク通貨が上昇し、豪ドルは特に上昇幅を拡大させました。市場全体のリスク選好の動きに加えて、オーストラリア準備銀行のブロック総裁の発言も豪ドルを押し上げる要因となりました。

ブロック総裁は、オーストラリア準備銀行はインフレ抑制のために必要ならば利上げを躊躇しないと発言し、火曜日の政策決定に反映されたタカ派姿勢を改めて示しました。オーストラリア準備銀行に利上げの準備があったとしても、市場では年内0.25%の利下げが予想されており、11月までの0.25%の利下げの可能性は約45%となっています。

ニュージーランド準備銀行がインフレ見通しを下方修正し、翌週の0.25%の利下げの可能性が80%まで上昇しているにもかかわらず、NZドルも上昇しました。トレーダーにとっては、市場のリスクオンムードの回復、及び中国の予想を上回るインフレがより重要だったようです。世界第二位の経済大国の需要回復の兆しは、主要貿易相手国の通貨にとってプラスにほかならないようです。

株価反発、原油とゴールドも回復

米株式市場では、米新規失業保険申請件数が予想上回る好調な結果となったことを受けて、主要3指数全てが大幅な上昇を記録し、ナスダック指数は約3%値上がりしました。たとえ株価回復が利下げ幅の縮小に繋がったとしても、経済指標の強い結果が株価にとって良いニュースであることを裏付けています。

米国の需要への懸念を背景に、原油価格は続伸しました。しかしながら、中東情勢の緊迫化に伴う原油供給への懸念も原油価格を押し上げました。

2,380ドルの付近のサポートラインを突破後、ゴールドも反発しました。ゴールドは米経済への懸念が強まった際の安全資産とは見なされませんでしたが、地政学リスク上昇時の資金の逃避先としては依然として見られているようです。