マーケットコメントー半導体株の売り加速で株価続落、米ドルは回復

投稿日: 2024年7月19日18時54分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・米中間の貿易摩擦への懸念から米株式市場は週次下落へ
・安全資産への資金流入から米ドルは回復もゴールドは下落
・昨日のECBによる金利据え置きでユーロ下落、円は堅調に推移も高値からは下落

米利下げ楽観論が暗転

金曜日の株式市場はほとんど赤字となり、FRBの利下げが間近との楽観ムードで始まった今週も、米中間での貿易摩擦への新たな懸念が高まることとなり、週次の下落幅が拡大する結果となりました。

この混乱を、ドナルド・トランプ氏が11月の大統領選で勝利する見込みが高まったことに対する市場の反応と解釈するのは時期尚早です。結局のところ、トランプ陣営は中国からの輸入品すべてに少なくとも60%の関税をかけることを提案しています。しかし、今週の株価下落の発端となったのは、中国への販売を目的に、米国の技術を利用する全ての半導体メーカーへの規制を強化するという現政権の計画といえそうです。

ハイテク株へ売りの圧力

大手ハイテク社は決算報告を前に、既に株価が割高となっている中、さらにハイテク株から、トランプ氏が政権に返り咲く際に恩恵を受けるであろう小型株などへのセクターローテーションの圧力を受けているため、ナスダックが最も打撃を受けています。

しかし、昨日のネットフリックスによる予想を上回る好調な決算報告により、市場のパニックも緩和する可能性があり、テスラやグーグルの親会社であるアルファベットなど来週の決算報告を前に楽観ムードが広がるかもしれません。

中国政府は支援策発表なしで世界的なリスクオフに拍車

世界中の株式市場では、トランプ氏による第2次政権となる場合、全ての輸入品に10%の関税が課せられるとの予想から、悲観的な状況となると見られています。さらに、中国共産党による3中総会が閉幕し、消費者や低迷する住宅セクターを支援する主な政策の発表がなかったことから、市場の失望感に拍車がかかりました。本日のIT障害も、航空会社や銀行、そしていくつかの企業にも影響する結果となり、市場のセンチメントに打撃となりました。

中国本土での株式が、中国政府によるETF購入の憶測から下落トレンドに逆らっているにもかかわらず、香港のハンセン指数は、今週最もパフォーマンスが悪かった市場の一つとなりました。

今週のゴールドは上昇から下落、米ドルは下落から上昇へ

米ドルに関しては、今週はFRBによるハト派転換により下落で始まりましたが、リスク回避が高まるとともに、安全資産への資金流入となり、反転して急騰するなど、大きな変動となりました。米ドルは小幅上昇で週を終えそうです。

一方ゴールドは、今週初めに最高値を更新した後、その上昇分のほぼ全てを帳消しとするまで下落しました。先週末のトランプ氏襲撃未遂事件後、安全資産への資金流入からゴールドは恩恵を受けましたが、現在のリスクオフムードは、主に米ドルに恩恵をもたらしているようです。

ユーロ下落、日本円は若干安定

昨日のECBによる金利政策会合にて、大方の予想通り金利が据え置きとなったことを受けて、ユーロは二日連続で続落しました。ラガルド総裁は9月会合での追加利下げについて示唆することを避けましたが、ユーロ圏の経済成長の見通しについては悲観的な発言をしました。投資家にとっては、この見解によって、年内に追加利下げがあるとの期待が高まる結果となりました。

日本円も今週の上昇分の一部を失っていますが、下落幅は落ち着いており、若干上昇して週を終えるかもしれません。今月、日銀は少なくても2回の介入を行ったと考えられており、さらに介入するのではとの懸念からトレーダーは警戒感を強めています。