マーケットコメント–パウエル議長の複雑な見解にもかかわらず、株高継続

投稿日: 2024年7月10日18時40分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • パウエル議長の発言後も米株高継続
  • フランスの連立政権の行方、ECBの利下げ派によりユーロの値動きに注目
  • 中国が債券市場の上昇に反応、しかしながら実際の問題は継続
  • NZ準備銀行のハト派への転換でNZドル下落

パウエル議長はハト派的見解を示さなかったものの、米株高継続

昨日の上院金融委員会の議会証言において、パウエル議長は利下げ時期を明確に示さなかったものの、インフレは目標の2%に向けて大きく前進していると述べ、FRBのハト派メンバーを満足させる結果となりました。

先週の米雇用統計結果により、議会証言でのハト派寄りの見解が予想されていました。しかしながら、予想ほどのハト派的見解にならなかった為、米株価は回復し、最高値を更新しました。大きな予想外のサプライズがない限り、また市場の反応も考慮した上で、本日の下院金融委員会の議会証言においても、パウエル議長は同様の見解を示す見通しです。

市場の関心は、明日発表される米6月消費者物価指数に既に向けられています。本日には、3名のFRBメンバーが発言予定です。ボウマンFRB理事、シカゴ連銀のグールズビー総裁、及びクックFRB理事は利下げに反対の姿勢を維持しているようですが、市場はFRBのハト派メンバーの発言により注目するでしょう。

フランスの政権の先行き不透明感にもかかわらず、ユーロは底堅く推移

ユーロ/ドルは最近の上昇幅を維持していますが、フランスの連立政権樹立に向けた協議は継続しています。現職の首相の続投により、第33回夏のオリンピックは問題なく執り行われるでしょう。

一方で、ECBのハト派メンバーが利下げに向けて動いています。イタリア中銀のパネッタ総裁は、追加利下げ の環境が整いつつあることに自信を見せました。ポルトガル中銀のセンテノ総裁は、経済成長が予想を下回っている為、年内数回の利下げの必要性を示したものの、市場のサプライズ要因にはなりませんでした。

ドイツ連銀のネーゲル総裁はより融和的見解を示し、「利下げが始まっても、自動的には継続しない」と発言し、9月利下げには依然として議論の必要性が浮き彫りになりました。本日、ネーゲル総裁の発言が予定されており、本日の経済指標結果で明らかになったユーロ圏の賃金上昇率加速に言及されるかも市場は注目するでしょう。

中国の問題は増大

本日に発表された中国6月消費者物価指数、及び中国6月生産者物価指数は、予想外に低下しました。中国6月生産者物価指数は、将来的にインフレ圧力がかかることを示しています。しかしながら、市場の流動性管理のために、今週月曜日に公表されたレポとリバースレポを使用するという中国人民銀行の意向を市場は依然として消化している状態です。これは銀行システムにおいて流動性を管理するための一般的な手法ですが、中国の問題は経済、より具体的には住宅セクターの低迷です。

7月15日から18日にかけて開催される第20期中央委員会第3回総会は、市場の関心を集めるでしょう。2024年5月の決定に加えて、住宅セクターの追加支援策の公表が予測されています。

NZ準備銀行はハト派的スタンスに変更

NZ準備銀行のタカ派的スタンス後退により、NZドルは対米ドルで下落しました。NZ準備銀行は、利上げの可能性を提示した5月の政策会合時から大きく方針を変えました。本日には記者会見も政策見通しの発表もありません。翌週に発表されるNZ第2四半期消費者物価指数が脆弱な結果となった場合、8月の利下げ圧力が加速するでしょう。

市場はNZ準備銀行のスタンス変更に素早く反応し、8月の利下げの可能性は60%まで上昇しました。NZ第2四半期消費者物価指数が予想外に悪化した場合、利下げ観測が一段と強まり、年内0.47%の利下げの公算が大きくなるでしょう。