マーケットコメントー軟調な米小売売上高で米株式市場は最高値更新

投稿日: 2024年6月19日18時23分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・米消費者の支出低下でリスク選好は上昇
・昨日の米株式市場は祝日を前に最高値更新、原油価格も上昇
・英インフレは総合CPI指数減速もサービスインフレは高止まり、ポンドは小幅上昇

FRBによる9月の利下げ観測高まる

昨日発表の米小売売上高は予想を下回り、米国の消費者が支出を抑制し始めた兆候を新たに確認することになりました。4月の小売売上高が、前月比0.2%減に下方修正されたことを受けて、5月は前月比でわずか0.1%の上昇にとどまりました。このデータによって、FRBは遅かれ早かれ利下げに踏み切るだろうとの期待が高まり、9月での利下げの確率は74%まで上昇し、年内の合計利下げ幅はほぼ0.5%まで拡大しました。

しかし昨日の発表では、GDPの測定に利用され、より狭い指標となるリテールコントロールグループが前月比0.4%と堅調に回復し、鉱工業生産が前月比0.9%に急増したことが示され、全て低調となったわけではありません。

しかし米CPI指数が軟調となったこともあり、投資家の間では、9月でのFRBによる利下げに対する確信が高まっています。昨日のいくらか楽観的で、タカ派とはならなかったFRBメンバーによる発言も、利下げへの期待を後押ししています。

AIを巡る熱狂とFRBによる利下げへの期待で米株式市場は上昇

昨日の軟調な米小売売上高を受けて、米国債利回りは低下し、月曜日の上昇分のほとんどを反転させて、金曜日に更新した2か月半ぶりの安値に近づいています。この動きは、米株式市場でのAIを巡る熱狂とともに、株式市場を押し上げ、上昇の勢いに拍車がかかりました。

ハイテク企業の比重の多いナスダックは、小幅高で取引を終えて最高値を更新し、S&P500では0.25%上昇して、今年31回目となる記録的な取引となりました。AI大手であるエヌビディアは3.5%上昇して、マイクロソフトを抜いて時価総額で世界最大の企業となりましたが、アップルの株価が1%強下落したことは主要指数の重荷となりました。

本日の米株式市場は祝日により閉場されるため、取引はありません。

米ドルは下落基調

しかし、リスク選好度の改善と米利下げ観測への楽観的な見方も米ドルにとって有利とはならず、米ドルは3セッション連続で、主要通貨に対して下落するリスクとなっています。

ユーロは、1.0735ドル付近でサポートされ続けており、一方ポンドは、3日連続で上昇幅を拡大しようと試みています。

英インフレ指数でポンド上昇、原油価格は強気に転換

本日、イギリスでの5月のインフレ率が、予想通りイングランド銀行の目標である2%を達成し、コアCPI指数もまた低下しました。しかし、サービスインフレ率は、予想では前年比5.5%まで低下でしたが、5.7%と予想を上回りました。

この小幅上昇により、イングランド銀行への利下げ観測は若干後退し、8月での利下げサプライズの可能性が低くなりました。明日はイングランド銀行による金利政策会合が予定されていますが、総選挙キャンペーンの中、利下げが示唆される可能性は低いでしょう。

スイス国立銀行も明日金利政策発表を控えており、市場は68%の確率で0.25%の利下げを予想しています。スイスフランの最近の上昇反転により、利下げの可能性が高まっていますが、インフレ圧力の再燃への懸念を緩和させるのに十分であるかはまだわかりません。

一方で原油価格は、2日連続の上昇後、一段落しました。WTI原油先物とブレント原油先物はともに、6月のリスクセンチメントの改善から恩恵を受け、7週間ぶりの高値まで上昇しました。