マーケットコメントー米失業保険申請件数増加で米ドル下落、ゴールド上昇

投稿日: 2024年5月10日18時25分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・米失業保険申請件数増加で労働市場の軟化示唆、米ドル下落
・米利下げ観測の高まりから、ゴールドと株式は上昇基調
・英中銀の政策決定からポンド下落も好調な英GDPで回復へ

米労働市場の軟化で利下げ観測高まる

今週の世界市場は、米経済データが労働市場の軟化を引き続き示唆し、利下げが予想よりも早く実施されるのではとの期待が高まり、楽観ムードで取引を終えそうです。

先週の米失業保険申請件数は急増し、これは通常は、解雇が始まったことの初期サインとなります。先月の失業率が上昇したことと、企業調査から雇用者数の減少が警告されたことを受けて、米労働市場が勢いを失い始めていることがさらに確認されました。

米労働市場の軟化によって、今後のインフレ減速の兆候と受け止め、結果として、FRBが利下げを早めるだろうと市場は解釈したため、米ドルは下落しました。市場は現在、年内にほぼ2回の利下げがあり、初めの利下げは9月と予想しています。

今後としては、来週の水曜日の米小売売上高と米CPI指数が、米ドルには重要な指標となるでしょう。この重要な指標が同日に発表されることは稀で、市場のボラティリティの高まりとなるでしょう。

ゴールドと株式は上昇基調

市場がFRBによる利下げが秋頃に始まることへの確信が深まり、ゴールドも上昇を再開しました。ゴールドは週間で2.5%以上の上昇に向かっており、現在は最高値から同様の距離で取引されています。

ゴールドにとっては、今後はかなり好調となる兆しがあります。米利下げ観測が再び高まり、世界中央銀行も、第1四半期にソブリン債の買い入れが新記録を更新するなど、かなりのペースでゴールド保有量を増加しています。これらの購入力が維持されていれば、ゴールドの今後の見通しは明るいといえるでしょう。

米利下げ観測の高まりは、米株式市場にも好材料となり、S&P500は最高値から1%未満まで近づいて上昇して取引を終えました。今四半期の企業収益も、これまでのところ、アナリストたちの予想を上回っており、米国債利回りの低下と自社株買いの増加とともに、株式の割高なバリュエーションへの懸念は緩和しており、株式のより明るい見通しに役立っています。

ポンドは下落後上昇と乱高下

イングランド銀行は昨日の政策会合決定にて、大方の予想通り、金利を据え置きました。金利委員会での投票では、据え置き賛成が7票に対して、利下げ賛成が2票と、利下げ賛成が前会合よりも1票多くなったことが示唆され、その結果ポンドは下落しました。さらに英中銀は、インフレ予想を下方修正し、利下げが近いことのシグナルと捉えられました。

そうは言っても、ドル安と株式のリスクオンモードからのサポートもあり、ポンドは、時間が経つにつれ、英中銀の政策決定後の損失の全てを取り戻して上昇しました。さらに、本日の第1四半期英GDPが予想以上に堅調となり、英経済が昨年陥った軽度の景気後退から脱出したことが確認され、ポンドは恩恵を受けて回復しています。

本日は、最新のカナダの雇用統計とミシガン大学消費者信頼感指数、そしてFRBメンバーの講演が注目となるでしょう。FRBメンバーでは、ボウマン理事とダラス連銀ローガン総裁、そしてバー副議長が講演する予定です。