マーケットコメントー米利下げ観測高まり、米ドルは引き続き下落基調

投稿日: 2024年5月7日17時30分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・米労働市場は予想以上に減速
・年内2回の利下げ予想から、米ドル下落
・日本政府による介入による円高も勢い失い今週は円安へ
・米株式市場は米利下げ観測への期待から楽観ムード

FRBの利下げ観測は再び高まる

先週の金曜日の米ドルは全面的に下落し、また、4月の米雇用件数が6か月ぶりの低水準となり、年間賃金の伸びも3年ぶりに4.0%を下回ったことから、昨日の米ドルはいくつかの主要通貨に対して下落幅を拡大しました。

米労働市場が予想以上に減速しているとの兆候は、特にFRBパウエル議長が先週のFOMC会合にて、FRBは利下げをする方向にあると示唆したこともあり、市場による利下げ観測の高まりとなりました。FF金利先物によると、9月に0.25%の利下げが行われる確率は約85%で、年内の合計利下げ幅は0.45%に拡大しています。

また、利上げの可能性は低く、最終的には利下げとなるだろうとのパウエル議長の見解に対して、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁とリッチモンド連銀バーキン総裁が同意を意を表したことも市場による利下げへの期待を後押ししたようです。

これらを鑑みて、また本日は重要な米経済データが不足していることから、本日のミネアポリス連銀カシュカリ総裁の発言が注目となるでしょう。カシュカリ総裁はタカ派と見られており、市場は総裁が他のFRBメンバーの見解に同意するかを見守ることになります。もしカシュカリ総裁がFRBの次の動きは利下げとなる可能性があると言及する場合、市場が予想金利経路をさらに引き下げることから、米ドルはさらに下落する可能性があります。

先週の円高から今週は円安へ

先週、日本政府による2回の覆面介入から、日本円は先週、2022年12月初旬以来の堅調な上昇となりましたが、今週は円安となっています。

円安が1ドル160円まで進行した際に、最初の介入があり、日本円は5.25%も上昇しました。しかし今週の円安によって、政府の介入だけでは、円安の流れは変えられないだろうとの見解が裏付けされました。

もちろん、日本政府による3度目の介入のリスクも依然としてありますが、日本円が持続的に回復するには、日銀が言葉のトーンを変える必要があります。前回の会合にて、日銀は次回の利上げが間近であるのかについて、明確なシグナルを出すことを避けたため、夏に追加利上げを期待する投資家にとっては期待外れとなりました。

豪中銀は本日の政策会合で中立的なスタンス保ち、豪ドル下落

先週の金曜日からのドル安から恩恵を最も受けて上昇した通貨は豪ドルでしたが、本日の金利政策会合にて、オーストラリア準備銀行は、金利の経路は依然として不透明であり、何事も排除も含有もしないとのガイダンスを繰り返したため、豪ドルはこれまでの上昇の大部分が帳消しとなりました。

オーストラリアのインフレも予想以上に粘着性があり、労働市場は依然として堅調であることからも、市場は豪中銀がタカ派となることを期待していましたが、中立的なスタンスを保ったことで、市場には期待外れの反応が出たようです。

市場は早期利下げに期待で株式市場は上昇

米株式市場は、米利下げ観測が高まったことから後押しされ、昨日、主要3指数全て上昇で取引を終えました。S&P500 とナスダックは1%以上も上昇し、テクニカル面では、これまでの調整局面は終わり、上昇トレンドが再開されたことが示唆されています。

年内の合計利下げ幅が拡大するとの見通しだけが、この株式市場の上昇の唯一の要因ではないようです。アルファベットやマイクロソフトといった大手ハイテク社が、AI関連への投資によって、引き続き成長すると報告したことから、予想以上に堅調となった企業による決算報告からも、投資家によるリスク・エクスポージャーの増大につながりました。