マーケットコメント―FRB年内3回の利下げ予想維持で米ドル下落

投稿日: 2024年3月21日19時45分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・FRBによるドットプロットは年内3回の利下げ予想を維持
・6月での最初の利下げ観測高まり、米ドル下落
・本日はイングランド銀行による金利政策会合、スイス国立銀行は利下げ実施
・S&P500とダウ・ジョーンズ、ゴールドは最高値更新

FOMC会合でFRBハト派、米ドル下落

昨日のFOMC会合にて、FRBが年内に3回の0.25%の利下げを維持する予想金利経路を発表したことで、米ドルは全般に下落しました。

ここ最近の米経済データが予想以上に粘着性のあるインフレを示唆し、またFRBメンバーの発言からも、FRBがドットプロットを改正して、12月までに2回の利下げを示唆するのではとの憶測が広がっていました。

しかし、米経済成長とインフレ予測にもかかわらず、ドットプロットは維持されました。FRBとしては、2025年に0.25%の利下げを1回削除したのみとなりました。金利政策決定後の記者会見にて、パウエル議長はここ最近の高いインフレを示す経済データは、物価圧力が徐々に緩和するとの見解に変わりはないと述べました。

市場による期待外れの反応は、市場が利下げ観測を確信したことから、米ドルの下落と米国債利回りの後退になりました。FF金利先物によると、6月の最初の利下げの可能性は80%まで引き上げられ、12月までの合計利下げ幅は0.83%まで上昇しました。

本日は、S&Pグローバルによる3月の購買者管理指数の速報値が注目となるかもしれません。製造業とサービス業ともに低下すると予想されており、FRBに続いて、市場の価格改定に影響する可能性があり、米ドルが続落するかもしれません。

本日の英中銀政策会合を前にポンド上昇、スイス国立銀行は利下げ決定

イギリスの2月のCPI指数が、総合とコアともに予想よりも減速したにもかかわらず、昨日のポンドは最も上昇した通貨の一つとなりました。FOMC会合と本日のイングランド銀行による金利政策会合を前に、投資家は大幅にポジションを調整することを避けたのかもしれません。

本日の金利政策会合では、イングランド銀行は金利を据え置くと予想されています。本日は経済見通しや記者会見も予定されていないことから、イングランド銀行がいつ利下げを開始するのかの手掛かりについては、政策会合に伴う声明と議事録が注目となるでしょう。

イングランド銀行がFRBほどハト派とはならない場合、市場は8月での最初の0.25%の利下げ観測を維持し、ポンドは米ドルに対して、1.2800の壁を突破する可能性があります。

本日、スイス国立銀行も金利政策会合があり、予想外に0.25%の利下げを決定しました。スイス国立銀行は、インフレ率が中期的な物価安定と整合的な水準にとどまるよう、必要に応じて金利政策を調整すると言及しました。この決定によって、スイスフランは下落しました。

ユーロ圏のPMIも本日発表があり、製造業指数が縮小の域でさらに下落しましたが、サービス業が堅調に上昇したことから、総合指数が上昇し、縮小と拡大の境となる50をわずかに下回りました。この指数発表後もユーロには影響は見られず、市場は依然としてECBが6月に最初の利下げを行う確率を80%としています。

FOMC決定と鈴木財務相の発言で円安は一段落

FOMC会合による決定を受けて日本円は多少回復したものの、ドル/円は黒字で取引を終えました。しかし、鈴木財務相が本日、政府としては「高い緊張感を持って」為替の動きを見守っていると述べたことで、日本円はさらにサポートされました。

そうは言っても、為替市場の値動きからすると、円売りはまだ継続しているようで、今後ドル/円が11月の高値を突破して取引されるか、また政府が実際に介入するのかが注目となるでしょう。

米株式市場はラリー、ゴールドは最高値更新

米株式市場は3指数全て黒字で取引を終え、ハイテク株の多いナスダックが最も上昇し、S&P500やダウ・ジョーンズも最高値を更新しました。高成長のハイテク株は、今後数四半期や数年のキャッシュフローを織り込んで評価されますが、FRBが12月までに3回の利下げ予想を維持したことで、現在の価値が高止まりした可能性があります。

市場の動向から、AI関連の成長機会がさらに織り込まれる可能性が示唆されており、FRBの決定によって、未知の領域を追求し続けることが可能となったのかもしれません。

ゴールドもFRB決定から恩恵を受けて上昇し、最高値となる2,222ドルを更新しました。次のレジスタンスとして可能性がある領域は、2023年の5月から10月の下落局面から161.8%となるフィボナッチ・エクステンション上の2,244ドル辺りとなるかもしれません。