マーケットコメント―日銀による利上げ観測高まるも円安進行

投稿日: 2024年3月18日20時27分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・春闘での大幅賃金上昇示唆で日銀の利上げ観測も高まるも円安進行
・円安から日経平均は上昇、米インフレ懸念から米株式市場は下落
・数々の中央銀行による政策会合を前に米ドルは安定、地政学上懸念から原油価格は不安定

円安進行の中、明日の日銀政策会合に注目

今週は、日銀を初め、FRBとイングランド銀行、そしてスイス国立銀行とオーストラリア準備銀行が金利政策発表を控える中、特に、日銀の歴史的な利上げの可能性についての憶測が話題を独占しています。先週金曜日に、春闘での賃金速報値が大幅上昇を示したことから、日銀がマイナス金利からの脱却を4月まで待たずに、今週実施するのではと市場は予想しています。

日本最大の労働組合である連合は、第1回回答集計にて、今年の平均賃金上昇率が5.28%と、33年ぶり最大となる賃上げを発表しました。国内の大企業がインフレ加速のペースで賃金上昇に応じたとのシグナルを受けて、日銀の中には、既に4月ではなく3月での利上げの可能性を示唆するメンバーもいます。しかし、この楽観ムードは、植田総裁には支持されてはおらず、植田総裁は、3月での利上げに依然として懐疑的な発言をして、4月までは政策転換を予見していません。

市場も今週0.1%の利上げが行われる確率を44%と予想しており、明日の利上げについて、完全には確信していないようです。したがって、明日の会合で、日銀が2016年から継続しているマイナス金利からの脱却をようやく決定する場合、円は上振れのリスクに晒されることになります。

しかし、利上げ決定の場合は、一時的な円高となるかもしれません。ここ数週間、日銀が景気刺激策から完全に脱却するかどうかへの疑念が高まったため、円安が進行しています。もし日銀が利上げを行ったとしても、1回限りの利上げを示唆する場合は、円高を維持することは難しくなるでしょう。また、同時にイールドカーブ・コントロール政策を撤廃するかどうかについても不確実性が残ります。

米インフレ加速が米株式市場の重荷に

今のところ、円安は国内株式市場には好材料となっており、本日の日経225指数は2.7%上昇しました。日銀が予想以上に景気刺激策の解除に踏み切ったり、今後踏み切ることを示唆する場合、国内株式市場の急激な調整の結果となる可能性があります。

今週のFOMC会合にて発表されるドットプロットは、12月に発表時には3回の利下げが示唆されていましたが、今回利下げ回数の減少が示唆されるのではとの憶測から、米株式市場には警戒感が漂っています。予想以上にインフレ加速を示唆した米CPI指数とともに、一連の米経済データによって、FRBの利下げ観測は大幅な修正を余儀なくされており、市場はFRBの金利見通しに渋々同意せざるを得ない状況になっています。

水曜日のFOMC会合を前に、金利が「より高く、より長く」維持されるのではとの懸念が再浮上し、ハイテク株の重荷となっています。先週のナスダック100は1%以上下落して取引を終えました。しかし、大手ハイテク株のマグニフィセント7の銘柄について、その高価なバリュエーションが精査される中、エヌビディアは今週、AIに関する年次コンファレンスを開催し、新しい半導体製品とエンタープライズ・ソリューションが発表する予定で、投資家の新たな関心を引くことになるかもしれません。

米ドル安定で豪ドルとユーロは小幅上昇

本日の為替市場では、中国からの経済データが予想を上回ったことから、豪ドルが堅調に推移しています。中国の鉱工業生産と固定資産投資は、1月から2月にかけて予想を上回って増加しました。小売売上高も予想を上回りましたが、12月に比べると鈍化しました。中国経済成長の見通しについての楽観的なムードは、明日のオーストラリア準備銀行での政策会合にて、引き締めバイアスが撤廃される場合、豪ドルのサポートとなる可能性があります。オーストラリア準備銀行は、利下げについて議論を始めるとは考えられていませんが、金利がピークに達したと示唆するかもしれません。

今週の中央銀行による政策会合は、木曜日のスイス国立銀行とイングランド銀行による金利政策会合まで続きます。しかし、ECBのメンバーによる利下げについての話し合いが進む中、本日はユーロが注目されています。ECBは6月に借り入れコストの引き下げを開始する考えを示しており、ハト派のメンバーの中には、利下げの前倒しを推し進めるメンバーもいます。そうはいっても、米ドルが精彩を欠く中、ユーロは1.09ドルに向けて上昇しています。

今週は、日銀とFRBによるそれぞれの政策決定が、予想外にタカ派となるか、または期待外れとなるかの可能性がある中、本日の米ドルは安定したスタートとなりました。しかし、週の後半の行方については、依然として不透明となっています。

原油価格は4か月ぶりの高値更新

原油価格は、WTI原油とブレント原油先物が11月初旬以来の水準まで上昇しており、エネルギーコストが後退していることから、タカ派的なサプライズとなる可能性があります。

日曜日のロシアの大統領選挙とともに、ここ数日、ウクライナがロシアの製油所施設をドローン攻撃したこととで原油の供給懸念が高まりました。一方で、ガザ地区での停戦の見通しも低下し、イスラエルがラファ地区への攻撃を拡大するとの兆候からも、原油価格は上昇しています。