マーケットコメント―ゴールド上昇、先週の強弱まちまちの米雇用統計で米ドルは低迷

投稿日: 2024年3月11日19時15分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・米雇用統計は相反する結果で米ドルは低迷
・日本円とポンドはドル安から恩恵を受けて上昇
・ゴールドは最高値更新も株式市場は下方調整



先週の米雇用統計で米ドルは方向性を失う

先週、米労働市場が引き続き減速していることが確認され、FRBが夏ごろに利下げを開始するとの予想が維持されました。2月の非農業部門雇用者数は、27万5千件と予想を上回りました。しかしその他の要因は、前月に比べて大幅にマイナス修正され、失業率は2年ぶりの高水準となり、賃金の伸びは勢いを失ったことが確認されるなど、期待外れの結果となりました。

2つの調査結果が相反するシグナルを発することは、景気循環の転換期において、しばしば見られることです。非農業部門雇用者数は堅調なペースで増加し続けているものの、雇用の伸びは、ほぼ1年間停滞していることが示唆されています。

したがって、非農業部門雇用者数にはまだ反映されていないものの、労働市場は緩和し始めています。FRBとっては、今後インフレが加速するリスクが低くなり、予想通り利下げを開始することが可能となります。

先週の金曜日、米雇用統計が発表されると、市場では米ドル下落となりましたが、株式市場が調整によって下落したことから、安全資産からの恩恵を受けて、その後いくらか損失を回復することができました。次の試練は、明日の米インフレレポートとなり、今後の米ドルの方向性が明確になる可能性があります。

日本円とポンドは上昇基調

一方で日本経済は、本日のGDPによると、景気後退を回避できたようです。景気低迷を免れて、春闘での賃金交渉が力強い賃上げで妥結する兆しが高まる中、日銀がマイナス金利からの脱出となる利上げの準備が出来ているとの憶測が飛び交っています。

来週の日銀会合にて、小幅利上げを実施する確率は50%となっていますが、日銀が長期利回りの上昇を可能とするイールドカーブ・コントロール政策の変更を検討しているとの報道もあります。そのため、先週の円は、主要通貨の中で最も上昇した通貨となりました。問題となるのは、この円高が持続可能な回復の始まりなのか、単なる一時的な回復なのかということです。

先週の円は最も上昇した通貨となりましたが、今年最も上昇している通貨はポンドです。ポンドは先週、昨年7月以来の最高値まで上昇し、米ドルに代わって、今年最も上昇した通貨となりました。

英インフレが引き続き加速していることから、イングランド銀行が利下げを行うのは中央銀行の中でも最後となるのではとの憶測からポンドは上昇しています。また、イギリスは双子の赤字、つまり財政収支の赤字と経常収支の赤字もあり、株式市場の急騰がポンドに利益をもたらしています。

株式市場は一段落もゴールドはさらに最高値を更新

米株式市場は、先週の雇用統計によって利下げ観測が維持されたものの、非農業部門雇用者数の発表後下落し、S&P500は0.65%下落して先週の上昇分を帳消しにしました。

もちろん、株式市場は依然として最高値付近で取引されており、この下落もおそらく、経済見通しの再検討というよりは、高値株の利益確定によるものと思われます。エヌビディアは5%以上下落し、他の半導体株も下落しました。

一方でゴールドは、先週の金曜日にまた最高値を更新し、今月に入ってすでに6.5%以上上昇しています。米ドルと米国債利回りの低下と、中央銀行による記録的なゴールド購入、そして中国投資家からの高まる需要を受けて、上海でのゴールド価格はロンドンよりも高額で取引されて反映されており、ゴールドにとっては完璧な後押しとなっています。