マーケットコメント―NZ中銀によるハト派政策決定でNZドル下落、米株式市場は様子見

投稿日: 2024年2月28日20時05分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・豪インフレ指数とNZ中銀への利下げ懸念緩和で豪ドルとNZドルはともに下落
・中国不動産トラブルも豪ドルとNZドルの重荷に
・米株式市場と米ドルは、明日のPCEデフレーターに注目

NZ中銀の政策決定はタカ派とはならず

本日、ニュージーランド準備銀行による金利政策決定がありましたが、それ以前に高まっていた市場からのタカ派的な期待に応えられなかったようです。オア総裁による最近のタカ派的見解や、オフィシャルキャッシュレート(OCR)は次に利下げよりも利上げとなるとの憶測にもかかわらず、ニュージーランド準備銀行は、政策に変更はなく、据え置きを発表し、金利はおそらくピークに達したことを示唆しました。

NZ中銀はまた、予想される利下げについても先送りする発言もせず、2025年の第1四半期に利下げを行う可能性があるとの金利予測を維持し、ハト派寄りともとれる対応となりました。

この政策決定により、NZドルは米ドルに対して1%ほど下落し、0.61ドル台辺りまで低下しました。今月、利上げの可能性があった際には、NZドルは2.5%以上上昇しましたが、NZ中銀は中立的なスタンスを維持する世界中銀の傾向に逆らうように見えないことから、現在は強気の見通しは縮小しています。

豪ドル回復も下落へ

本日の豪ドルも、予想を下回るオーストラリアでのインフレデータから圧力を受けて、下落基調です。オーストラリアの1月の消費者物価指数は、前年比3.4%と横ばいとなり、基調的な圧力は前月から緩和され、3.6%との予想を下回りました。

インフレ減速により、最近タカ派的な見解を打ち出していたオーストラリア準備銀行の方針が注目となりました。市場は年末までの利下げ観測を後退させ、インフレデータの後、豪ドルは0.65ドル台を下回る水準まで下落しました。

中国の不動産市場にはさらなる亀裂

豪ドルやNZドルといったリスク連動通貨にさらに打撃となったのは、中国の不動産開発大手である碧桂園が香港の裁判所から清算申請に直面しているとの報道により、中国経済への懸念に拍車がかかったからです。

中国の株式市場は急落しましたが、他の株式市場での反応は鈍くなっています。おそらく、投資家は今のところ波及効果は少ないと見ていますが、不動産セクターを支援するべく、中国政府による対策を促すことになるため、良い機会だとみているとも捉えられます。

香港政府は住宅需要を促進するため、不動産規制の緩和を発表するなど、本日すでに対策の発表がありました。

株式市場は勢い失い、FRB利下げ観測に警戒感

昨日の米株式市場が強弱まちまちで取引を終えたことを受けて、本日のほとんどのアジア指数は赤字で取引を終え、欧州の株式市場も下落で取引が開始されました。木曜日の米PCEデフレーターを前に、今週の市場は様子見となっています。

S&P500のラリーは5,100台に達成した後、勢いを失ったように見えました。しかし、警戒感が高まっているのは、次なる心理的なハードルというよりは、今後のFRBの利下げへの期待が後退していることのようです。

米経済のソフトランディングへの期待から強気相場を維持

今年初め以来の顕著な再価格設定によって、市場はもはやFRBによる予想金利経路以上の利下げを織り込んではいません。

FRBメンバーは、一同で早急な利下げの必要性のないことを強調し、市場に辛抱強く待つことを説いています。この統一されたメッセージは、インフレを含む米経済データが予想以上に堅調であることによります。

米インフレに関しての次なるデータは、木曜日のPCEデフレーターとなり、FRBもコアPCE指数をインフレ測定に利用することから、市場は注意深く見守ることなるでしょう。市場は、FRBによる利下げ観測について、再検討することで上手く織り込んだようで、米経済の景気後退への懸念も後退しています。しかし予想通り今年の利下げが2回となる場合、株式市場に打撃となる可能性があります。

本日は、アトランタ連銀総裁、ボストン連銀総裁、そしてニューヨーク連銀総裁の講演も予定されており、注目となるでしょう。

米ドルは回復へ、原油価格はレンジ内で横ばい

本日の米ドルは、他の主要通貨に対して小幅上昇し、下落基調から一段落しました。豪ドルとNZドルの下落から、ユーロとポンドも下落しましたが、日本円は、米ドル以外の主要通貨に対して上昇を拡大しました。

ドル高によって、ゴールドは下落し、原油価格も欧州の取引で下落しました。原油価格は、イスラエルとハマスの間で、何らかの停戦に合意する努力が図られているにもかかわらず、フーシ派の反対勢力による紅海の船舶への攻撃が続いていることから、2月中旬以降、レンジ内で横ばいで推移しています。