マーケットコメント―好調な米雇用統計を受けて米ドルと株式市場は上昇基調

投稿日: 2024年2月5日19時36分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・予想を大幅に上回る米雇用統計で米ドル上昇
・トランプ前大統領による中国への関税への警告も株式市場は過去最高値更新
・原油価格下落、次なる注目は米ISM非製造業データと豪中銀による政策金利発表

好調な米雇用統計で米ドル上昇

先週金曜日に発表された米雇用統計が予想を大幅に上回ったことから、FRBによる早急な利下げ観測は後退しました。1月の非農業部門雇用者数は予想の約2倍となる35万3千件となり、12月の雇用者件数も上方修正されました。

その他好調だったのは、4.5%となった前年比の賃金の伸びで、インフレとの戦いがまだ終結していないとの懸念材料となりました。この好調なデータから、市場はFRBが3月に利下げをすることはないと解釈したようで、これはパウエル議長の発言を裏付けしたことになります。

この米雇用統計を受けて、3月での利下げの確率は15%まで低下しました。現在は、年内に合計で5回の利下げが見込まれており、ほぼ6回との予想から下方修正されています。市場が高い金利がもう暫く継続することを価格設定に織り込んだことで、米長期金利とともに米ドルも上昇しました。

米ドルに対して最も下落したのは日本円で、日米の金利差から、金曜日に1.5%近く下落しました。次の米ドルの方向性を左右するイベントは、本日の米ISM非製造業調査となるでしょう。このデータがさらに好調な米経済を示唆する場合、FRBによる3月での利下げの可能性は消失し、米ドルのラリーが継続するかもしれません。

株式市場は新たに過去最高値更新

先週の米株式市場は、堅調な米労働市場とハイテク大手による力強い決算報告の兆しにより、利下げ 先送りへの懸念が払拭されたため、過去最高値を更新して取引を終えました。

米非農業部門雇用者数を受けて、S&P500は序盤の下落を帳消しとし、アマゾンとメタは好調な決算報告から、7.9%と20.3%とそれぞれ株価が上昇したことからも恩恵を受け、過去最高値を更新しました。

株式市場は現在絶好調です。米経済と個人消費が堅調に推移する中、この経済成長が鈍化すると、FRBが利下げで救助すると思われ、その間、AIへの投資により収益が潤っています。これらの要因によって、バリュエーションがこれほど引き延ばされているにもかかわらず、株式市場のラリーは継続しているのも不思議ではありません。

トランプ前大統領が、11月の大統領選で勝利した場合、中国製品に60%を超える関税を課する可能性があると警告したにもかかわらず、株式市場の前向きなムードには影響はなかったようです。2017年の米中間での貿易摩擦の際でさえ、トランプ氏は過剰に関税を課することなく、米消費者への影響を最小限に抑えたことから、投資家はこの脅しを誇張された政治的発言と見ているのかもしれません。

原油価格急落、本日は米ISM非製造業指数、明日は豪中銀による政策金利発表

原油価格は先週、堅調な経済指標と株式市場の明るいトーン、そしてイラクとシリアでのイラン関連施設への米国の攻撃といった状況からの恩恵を得ることができずに急落しました。

原油価格にとって前向きな状況にもかかわらず、原油価格が上昇できない要因としては、米国の原油生産増量に対抗するため、OPECプラスによる減産計画が3月以降は継続されないことなど、投資家のより大きな懸念を浮き彫りにしています。中国の不動産業が過剰債務の削減を続ける中、中国からの需要が弱まるリスクとともに、原油市場の投資家はしばらく慎重な姿勢を取る可能性があります。

今週は、本日の米ISM非製造業指数、明日はオーストラリア準備銀行による政策金利発表が注目となるでしょう。オーストラリアでは、インフレが急激に減速しており、労働市場も失業率が上昇していることから、オーストラリア準備銀行が引き締め対策を終焉するリスクがあり、その結果、豪ドルが再び売りとなりやすい可能性があります。