マーケットコメントー日銀植田総裁の政策修正示唆で円は回復基調に

投稿日: 2024年1月23日19時02分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・日銀は本日の政策会合で現状維持決定もコアインフレの低下を予想
・植田総裁の比較的タカ派発言で円は回復へ
・中国政府による刺激策検討の報道でリスクセンチメント向上
・S&P500とダウ・ジョーンズは新たな最高値更新

日銀植田総裁の記者会見で円は回復へ

本日の焦点は日本円で、日銀が大方の予想通り超緩和政策の維持を決定し、4月以降の国内のコアインフレ率の予想を10月の2.8%から2.4%に下方修正したことから、売りの圧力をうけました。

しかし日銀の植田総裁は、政策会合後の記者会見にて、今後日本経済が持ち直し、目標のインフレ2%に達する可能性も徐々に高まっていると述べました。また、賃金の上昇について大企業からの前向きな発言もみられるとし、今回の展望レポートには修正がなかったものの、3月より4月により確実なデータがあるにもかかわらず、政策修正は今後可能であることも示唆しました。

植田総裁のこの発言で、市場は日銀による利上げ観測を引き上げたことから、円は堅調に回復の兆しを見せ、主要通貨の中でも上昇しています。この会見の前には7月に織り込まれていたマイナス0.1%から0%への利上げですが、現在6月に前倒しになりました。市場による3月での利上げの確率も23%になりました。

4月の日銀政策会合は、春闘後初の会合となることもあり、利上げの確率が50%弱から60%以上に引き上げられ、この利上げを裏付けするような経済データや日銀メンバーの発言がある場合、上振れへの余地は十分あり、本日回復している円を続いてサポートする可能性があります。

米ドル下落、中国政府による株式刺激策の報道で株価上昇

本日の米ドルは、全体として売りが進みました。おそらく、中国政府が低迷する株式市場救済のため、1兆元相当の財政刺激策と同規模の債券刺激策を検討しているとのニュース報道の後、リスク選好度が高まったことによるでしょう。

この報道で中国株は上昇し、豪ドルとNZドルも回復したことから、市場もこの刺激策を支持していることが示唆されました。しかし、パンデミック後の経済の回復が後退した後、中国株を売ってきた世界中のファンドマネージャーは、中国のGDPの4分の1を占める不動産セクターを修復するには長い時間とさらなる刺激策が必要だと考えているようです。したがって、今日の報道だけでは、中国株の流れを変えるには十分ではないかもしれません。

米株式市場はラリー継続、ゴールドも回復へ

米株式市場の3指数は全て上昇しました。大手企業による決算発表を前に、大手ハイテク株が続伸する中、ダウ・ジョーンズとS&P500はともに史上最高値を更新しました。

本日はネットフリックスが、閉場後に決算報告をする予定で、明日はテスラが続きます。木曜日には第4半期の米GDPの発表が予定されており、来週のFOMC決定を前に注目となるでしょう。

米ドル下落から恩恵を受けたのか、本日のゴールドは回復しています。そうはいっても、市場は3月でのFRBによる利下げ観測を後退させており、木曜日の米GDPと来週のFOMC会合によって市場が利下げ予想をさらに押し下げる場合、本日の回復が本格的に拡大するのは難しいかもしれません。

エネルギー市場では、米国が極端な寒気で原油生産を抑制している中、ウクライナのドローンがロシアのノバテクのガスコンデンセート工場を攻撃したことで閉鎖に追い込まれたことで、原油供給への懸念が高まり、昨日の原油価格が上昇しました。