マーケットコメントー米利下げ観測後退で米ドル上昇

投稿日: 2024年1月17日19時01分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・FRBウォラー理事は利下げを急ぐ必要なしと発言
・3月での最初の利下げ確率低下で米ドル上昇
・予想を上回る英インフレデータでポンドは回復
・日本円とユーロは続落、米株式市場も下落

市場による米利下げ観測後退、本日は米小売売上高に注目

昨日の米ドルは全ての主要通貨に対して急騰し、本日も続伸しています。これは、FRBウォラー理事がインフレは目標とする2%まで「射程内」であるが、インフレの鈍化が持続し続けるまで、早急に利下げを開始する必要はないと述べたことによります。

ウォラー理事は、FRBによる利下げの可能性について公に述べた最初のメンバーとなったことから、早期利下げ観測を押し返したこの発言を市場は最終的には聞き入れ、ウォラー理事が3月での利下げを支持しないならば、おそらく他のFRBメンバーも同じ考えだと見たようです。そのため、市場の3月での利下げの確率は70%以上からやや減少し、65%辺りとなり、12月までの合計利下げ幅は、1.60%から1.55%に縮小しました。

そうはいっても、この市場観測にはまだ調整の余地は十分にあり、本日の12月の米小売売上高によっては、利下げ観測がさらに後退する可能性があります。12月の米CPI指数が予想以上に加速したことから、消費者需要の改善が、米経済の堅調な成長を示すとともに、今後数か月にインフレの粘着性が証明されることへの懸念にもなります。したがって、本日の経済データ次第では、市場による予想金利経路が上昇修正され、結果として、米ドル回復が継続するかもしれません。

本日は、12米国連邦準備銀行による経済報告であるベージュブックと、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁の発言にも注目が集まるでしょう。

本日の予想を上回る英インフレデータでポンドは上昇

昨日のポンドは、11月までの3か月間でのイギリスでの賃金の伸びが減速したことを受けて、米ドルに対して下落しました。しかし本日、12月の英CPI指数が予想を上回ったことから、12月の英サービス業による上振れリスクが確認されたため、ポンドは回復しています。

英総合CPI指数はイングランド銀行の目標とする2%の2倍で、コアCPI指数も5.1%に留まっています。ドイツ銀行などの予測では、英インフレは4月までに2%を下回ると予想されていたため、本日のCPI指数とは対照的となり、5月での最初の利下げの確率は90%から55%まで急低下しました。

イングランド銀行がFRBの後に利下げを開始するとの期待は、ここ最近下落していた米ドルに対するポンドの回復に役立つかもしれませんが、金曜日には12月の英小売売上高も予定されており、ポンドにはまだ試練が続くでしょう。

円安進行、ECBメンバーは利下げについて意見分かれる

米利下げ観測の後退とともに、日銀による早期マイナス金利解除はないとの見識が強まったことから、日米の金利差が拡大したため、昨日の日本円は最も下落した通貨となりました。

ポルトガル中銀センテノ総裁とフランス中銀ビルロワドガロー総裁は、ダボス会議にて利下げに前向きな姿勢を示し、特にフランス中銀は今年利下げを行う必要があるかもしれないと述べました。これらの発言は、ドイツ中銀ナーゲル総裁とECBシュナーベル専務理事が、利下げを語るのは時期尚早であると言及した後となりました。このため、市場は本日のECBラガルド総裁の発言からECBの立場について判断を仰ぐ可能性があります。

米株式市場では、ダウ・ジョーンズが3指数のうち最も下落し、3指数すべて赤字で取引を終えました。市場による米利下げ観測後退が株式市場下落の要因となっているようで、本日の米小売売上高が改善を示す場合、米株式市場はさらに下落する可能性があります。本日の中国のGDPも予想を下回ったことで、株式先物の下落に反映されているようにセンチメントを悪化させている可能性もあります。