マーケットコメントーECBメンバーの早期利下げ観測押し返しで市場のムードは悪化、FRBも追随か

投稿日: 2024年1月16日20時14分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・ECBメンバーによる早期利下げ観測反対姿勢からユーロは下落基調
・本日講演予定のFRBウォラー理事のタカ派転向を懸念して米ドル上昇
・軟調な英豪経済データからポンドと豪ドルは下落
・見通し不透明の中、原油価格は横ばい、ゴールドは上昇できず

ECBメンバーは早期利下げ観測否定

ECB政策委員のメンバーでオーストリア中銀ホルツマン総裁が今年の利下げに関して疑問を呈したことで、主要中央銀行による利下げ観測へのハト派的期待には本日大きな打撃となりました。世界経済フォーラムの年次総会が開催されているスイスのダボスにて、ホルツマン総裁は、中東での地政学的なリスクがインフレの脅威となり得ることを挙げました。また、紅海での商船の混乱が早急に解決することには悲観的な見方を示し、「2024年は利下げを全く想定するべきではない」と警告を促しました。

他のECBメンバーも、早くて春の利下げ観測については賛同しない意を表しましたが、ホルツマン総裁ほどタカ派とはなりませんでした。ドイツ中銀ナーゲル総裁は、先週末に早すぎる利下げに反対する姿勢を示したECB執行部のレーン専務理事に賛同しました。

一方、フランス中銀ビルロワドガロー総裁はECBが利下げを開始するタイムラインへの言及は避けたものの、理事会内で意見が分かれていることを指摘しました。そうはいっても、ECBが市場による大幅利下げ観測を後退させるべく協調していることを無視することは困難といえるでしょう。

本日のFRBウォラー理事による講演に注目

今後の課題は、この数か月間にわたり、緩和政策への市場の過大な期待を抑制すべく、FRBもECBと同様な戦略を取るかどうかでしょう。本日は、FRBウォラー理事による講演を控え、市場を驚かせた最近のハト派的見解を撤回するのかについて多くの憶測が飛び交っています。

ダボス会議でのECBメンバーの意見を受けて、世界的に債券利回りは上昇し、特に米国債利回りは、昨日のキング牧師記念日による休場の後、本日取引が再開されたことから、上昇に転じました。しかし米国債利回りが先週の米CPI指数とPPI指数後にどれほど低下したかを考慮すると、この上昇は比較的控えめなものでした。

短期金融市場でも大きな価格調整は見られず、FRBによる利下げ幅は合計で約1.65%から1.59%近くに縮小し、市場は依然として、圧倒的に今年の後半に大幅利下げが行われると予想していることを示唆しています。政策当局者のメッセージを聞き入れるとすると、最初の利下げは、3月よりも春の後半か夏となる可能性が高いでしょう。

ユーロ、ポンド、豪ドルともに下落も米ドルは上昇基調

ECBのタカ派姿勢からユーロは恩恵を受けられずにいる中、米ドルは一晩で大幅に上昇しているのは印象的といえます。本日の米ドルは、1か月ぶりの高値まで上昇し、今年少なくても6回の利下げを予想している市場に逆らっています。

おそらく、ECBによる高い金利をより長く維持するとのメッセージが、過度の引き締めとなることへの懸念を再発し、ユーロの重荷となっている可能性があります。さらに、紅海での緊張した情勢や、トランプ氏が11月の共和党の党首候補指名を獲得するとの見通しが、安全資産としての米ドルの需要に拍車をかけています。トランプ氏は、昨日アイオワ州の党員集会にて勝利し、再選に向けて選挙活動の後押しとなりました。

一方で、ポンドと豪ドルは本日下落しています。オーストラリアの消費者心理調査が低迷したことから豪ドルは圧力を受け、イギリスでは11月までの3か月間で、賃金の伸びが予想よりも大幅に緩和したことから、ポンドは1.27ドルを割り込みました。

今後の不透明さの中で原油価格とゴールドも不安定

全体として市場には今後の不透明さが漂っており、原油価格とゴールドにも反映されているようです。原油先物は最近、下降トレンドラインを突破しましたが、中東危機からの供給制約や他の地域で生産問題が、特に中国経済の見通しへの懸念が高まりによって相殺され、横ばいに向かっています。明日発表の中国のGDPがこの市場の懸念を裏付けるのか、それとも和らげるのか、注目されます。

利下げ観測が高いままにもかかわらず、上昇を続ける米ドルによって、ゴールドの上昇は阻まれています。今週は、FRBのメンバーが市場の大幅利下げ観測を押し戻すような発言を繰り返す場合、ゴールドにとっては決定的となる可能性があります。