マーケットコメントー米CPI指数の予想外の加速も世界市場は最終的に横ばい

投稿日: 2024年1月12日19時39分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・米インフレレポートは予想外に加速も市場は落着きの反応
・米利下げ観測に変更なしで米ドルと株式市場は横ばいで取引終える
・米英軍によるイエメンへの空爆で原油価格とゴールドは急騰

米CPI指数は予想外に加速も市場は落着きの反応

昨日の米インフレレポート発表後、世界市場はかなり動揺しましたが、最終的には横ばいで取引を終えました。12月の総合CPI指数は、前年比3.4%と予想の3.2%から加速し、コアCPI指数も、エコノミストらの予想を若干上回りました。

この米CPI(消費者物価)指数発表に対する直後の市場の反応はタカ派となりました。市場が今年の利下げ観測の一部を下方修正すると、株式市場とゴールドは下落し、米ドルは急騰しました。しかし、しばらくするとこの反応も後退し、ほぼ全ての資産にて反転が生じて横ばいで取引を終えました。したがって、市場は変動したものの、最終的には横ばいとなりました。

実際、米CPI指数の結果が吟味されると、3月での利下げの確率はやや引き上げられました。市場は、今回のインフレ率加速の要因はインフレ指数の遅行要素と見られる住居費の上昇を反映したと判断し、金利経路を修正するほどの予想外の内容ではなかったと考察したようです。

FRBとしてはCPI指数よりも、住宅費の比重がはるかに低いPCE(個人消費支出)デフレータを重要視しています。そのため、ディスインフレの行方の手掛かりとしては、次回のPCEデータがより有利なデータとなり、FRBは早くて3月にも緩和サイクルを開始すると見られています。

米英軍によるイエメン空爆で原油価格とゴールドは急騰

地政学では昨日、ここ最近の紅海での商船への攻撃に対する報復として、米英軍が親イラン武装組織であるイエメンのフーシ派の軍事拠点を空爆しました。

中東での緊張はすでに悪化する中、この米英軍による空爆によって、中東での紛争拡大への懸念が広がり、原油価格とゴールドの上昇に反映されています。そうはいっても、この紛争はこれまでのところ、原油価格にはほぼ直接的な影響は与えておらず、実際に一部の原油生産が停止するまで悪化しない限り、原油価格が長い間上昇し続けるのかどうかはまだ疑問が残ります。

昨日のゴールドは、米CPI指数の加速を受けて売りの圧力を受けましたが、イエメンへの空爆が安全資産への需要を押し上げ、米長期金利を押し下げたことから、50日移動平均線で新たな買い注文が入り、大きく反発しました。

ゴールドの今後の方向性の手掛かりとなるのは、来週水曜日の米小売売上高で、市場が70%の確率で予想するFRBによる3月の利下げに対する重要なカギを握ることになるでしょう。

英GDPは予想以上に増大、中国ではデフレ続く

本日の英GDPによると、11月の英経済は予想よりも若干拡大したことが示唆され、景気後退への懸念が緩和されました。しかし、イギリスでの景気後退の懸念は緩和しても、経済成長が依然として停滞しているため、ポンド上昇とはなりませんでした。

中国では、12月の経済データが3か月連続でデフレに陥ったままであることを示唆しています。明るいニュースとしては、輸出が予想以上に増加しており、世界的に製造業への需要がようやく勢いを増しつつあるとの楽観的な見方が強まりました。

本日は、米生産者物価指数が注目となるでしょう。今週末の台湾総統選も注目となりますが、台湾と中国本土との緊張関係を鑑みると、世界への反響の可能性もあります。