マーケットコメントークリスマス休暇で薄商いの中、ゴールドと株価は上昇基調

投稿日: 2023年12月28日20時03分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・米長期金利低下でゴールドは最高値更新
・米利下げ観測の高まりで米株式市場は史上最高値更新
・米ドル下落でユーロと円上昇

米利下げ観測の高まりからゴールド上昇

世界市場は、FRBを先頭に主要中央銀行による来年の大幅緩和サイクル開始を見込んで、引き続き取引されています。特にここ数週間で、経済成長減速とインフレ圧力の後退を背景に、市場は来年の春頃の大幅利下げの確率は引き上げています。

FRBによる利下げ観測が飛び交う中、米国債利回りは低下し続けており、米ドルは下落基調です。また、利息の発生しないゴールドのような資産にとっては、この動きは朗報で、ゴールドは米ドルで換算されることもあり、強気トレンドとなっています。

昨日のゴールドは、1オンス2,077ドルで取引を終えました。これは、史上最も高い終値で、今月初めに一時的に突破したものの維持できなかった水準です。米長期金利と米ドルの後退とは別に、ゴールドはまた地政学的な不安定さや、中国などの中央銀行による準備金分散のための直接購入からも恩恵を受けています。

来年のゴールドは、経済情勢の行方と市場の期待する利下げが予想通りに実行されるかに左右されることになるでしょう。地政学上のリスクも大きな影響となります。実際、ロシアがウクライナでの停戦を密かに計画しているとの報道を考慮すると、マクロ経済下では、ゴールドの下振れリスクとなる可能性があります。

米株式市場は引き続き続伸

株式市場は今年も好調で、最近ダウ・ジョーンズとナスダック100が史上最高値を更新するなど、ラリーが過剰気味のようです。S&P500も史上最高値から1%未満まで近づいて上昇しています。

たとえここ最近の株式のラリーが、流動性が乏しい環境下で業績不振の投資マネージャーが年末のラリーを追うといった季節的な要因に起因するとしても、大きな背景には、市場が恐れていた米国の景気後退への懸念が後退したか、少なくても先延ばしとなったことがあるようです。

今年の初めに、多くの投資家は景気後退を念頭にポジションを取りましたが、景気後退が現実とならなかった際に、リスクエクスポージャーを引き上げざるを得ませんでした。問題は、米株式市場が来年の見通しとして、景気後退なしと企業収益の急激な伸び、そしてFRBによる大幅利下げといった夢のようなシナリオを織り込んでいることです。

つまり、株式市場は完璧なシナリオを予想しています。バリュエーションが既に過大に割高であることから、特に世界経済が勢いを失いつつある中での企業収益の伸びが下振れした場合、この見通しは混乱を招く可能性があります。

ドル安でユーロと日本円は上昇

今月の米ドルは、市場がFRBによる来年の利下げを3月に前倒ししたことから、苦戦し続けています。FRBは現在、ヨーロッパの経済がテクニカルリセッションの瀬戸際であるにもかかわらず、ECBよりも早く利下げに着手すると見られています。

当然のことながら、ドル安からユーロは恩恵を受けて上昇しており、本日1.11ドルを突破しました。日本円もドル安により上昇しており、FRBによる利下げ観測の高まりが、利上げを急ぐ必要のない日銀を上回り、5か月ぶりの高値を更新しました。

もちろん、為替市場にて今年一番上昇した通貨はスイスフランで、ユーロと米ドルに対して8年ぶりの高値まで更新しました。スイスフランの上昇には、ユーロ圏の経済が勢いを失った中での静かな安全性追求とともに、スイス国立銀行によるマイナス金利解除と為替介入が主な要因となりました。