マーケットコメント―FRBは早期の利下げ観測にけん制も市場は聞く耳持たず

投稿日: 2023年12月18日19時37分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・FRBメンバーは早期の利下げ観測にけん制
・市場はFRBメンバーの意見に懐疑的で米長期金利上昇、株価下落も一時的
・明日の日銀会合での利上げ観測は後退、日本円はやや下落

市場の利下げ期待への抑制にFRBのダメージコントロール始まる

先週のFOMC会合後のパウエル議長のハト派寄りの記者会見以来、FRBメンバーは市場の大幅利下げへの期待をどうにかして抑制しようと試みているようです。先週の金曜日、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁とアトランタ連銀ボスティック総裁ともに、早期の利下げ観測を押し戻すような発言を強調しました。

ウィリアムズ総裁はCNBCでのラジオインタビューで、「我々は利下げについてはあまり議論していない」とし、ボスティック総裁も、来年の第3四半期までの利下げの可能性を否定しました。シカゴ連銀グールスビー総裁は、来年3月での利下げに踏み切るとの見方を否定しませんでした。しかしウィリアムズ総裁の発言の方が、もっと慎重でパウエル議長からも支持されているように受け止められたようです。

先週の水曜日でのパウエル議長の発言を受けて、市場は楽観ムードに包まれましたが、FRBメンバーによる利下げ観測への待ったをかける発言は、議長によるダメージコントロールであった可能性もあります。問題は、市場の利下げへの期待が一度押し上げられたことから、この大きな期待を後退させるには、メンバー発言以外の手段が必要となるかもしれません。

FRB発言も市場は利下げの前倒しに期待か

ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁の発言を受けて、先週の金曜日、米長期金利は一時的に上昇し、米ドルを押し上げましたが、米株式市場は下落しました。しかし、この動きは比較的緩やかにとどまり、反転するのに時間はかかりませんでした。本日も低下し続けている10年債利回りよりも、10年債利回りの方がこれらの動きをより敏感に反映しているようです。

したがって、市場はインフレが近い将来2%まで低下することに確信をもっているようで、来年末までの利下げ幅も合計で1.5%近くまで織り込まれていることからも裏付けされます。また、今後の政策への見通しに関するパウエル議長のハト派的な発言は、米経済のソフトランディングへの楽観的なムードを押し上げることが目的だった可能性があります。しかし、市場の期待にはこれ以上の助けはいらず、そういった意味では、今後数日間で利下げ観測が後退するかどうかが注目となるでしょう。

今のところ、差し迫った調整の動きはみられず、金曜日のダウ・ジョーンズとナスダックは小幅上昇で、S&P500はほぼ横ばいで取引を終えた後、米国株先物はわずかに上昇しています。

ヨーロッパでは、株式市場は強弱まちまちで、今週のスタートを切りました。ECBが、FRBとともに利下げ観測の前倒しを押し返す中、今週はクリスマス休暇に入る最後の週となります。

ECBタカ派発言でユーロ上昇、明日の日銀政策会合を前に円はやや下落

ドイツ中銀ナーゲル総裁とエストニア中銀ミュラー総裁による本日のタカ派的な発言を受けて、ユーロは上昇し、先週金曜日の損失の一部を取り戻しています。豪ドルとNZドルも続伸しており、中国政府が低迷する経済への刺激策を講じるとの新たな期待の中、米ドルに対して5か月ぶりの高値近くまで上昇しています。

しかし、日本円は欧州取引において、米ドルに対して142円40銭近くまで下落し、円高のトレンドは反転しています。今月の日銀会合での利上げへの憶測が飛び交った後、現在は利上げは来年4月となると見られており、日本円への下押し圧力となっています。

債券利回りの急騰が収まり、米ドルの上昇も落ち着いたため、日銀としては政策修正に時間的な余裕が生まれました。植田総裁は、来年の春闘での交渉結果がマイナス金利解除の決定に大きな意味を持つことを繰り返し述べており、明日の日銀政策会合では、現状維持となると見られています。

今週の金曜日の米コアPCE(個人消費支出)指数が今週の市場の焦点となるでしょう。