マーケットコメント―円高進行、本日の米雇用統計に注目

投稿日: 2023年12月8日18時59分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・日銀によるマイナス金利解除への期待から円高に
・本日の米雇用統計で労働市場減速の再確認となるか?
・グーグル株急騰でAI関連株ラリー再燃、株価上昇

日銀総裁発言で円高に

昨日、日銀植田総裁がマイナス金利が終焉を迎えていることを明らかにしたことを受けて、日本円は米ドルに対して2%上昇しました。

参院財政金融委員会の答弁にて、植田総裁は金融政策運営は、来年に向けて「一段とチャレンジングになる」と述べました。また、マイナス金利解除後、目標政策金利について、日銀としていくつかの選択肢があることも明らかにしました。

この植田総裁の発言で、他の中銀が利下げを開始する来年、日銀が唯一の利上げを行う中央銀行であることを市場は確信したことから、円高となりました。市場は、春闘での賃金交渉の結果を考慮した後の来年4月に、日銀がマイナス金利から脱却することを予想しています。

為替市場以外でも、オプショントレーダーは、円高の勢いに便乗したようで、これはドル/円オプションのインプライドボラティリティの急上昇に反映されています。日本円は昨日、米ドルに対して、一時4%ほど上昇しましたが、200日移動平均線付近で上昇は一服し、最終的には上昇幅は半分まで縮小しました。

全体として、ここ数年日本円を苦しめてきた要因が反転し、金利差の縮小とエネルギー価格の下落が日本円を支えることから、日本円の来年の見通しは明るいと言えるでしょう。昨日の円高は、待望のトレンド反転の始まりとなるかもしれません。

本日の非農業部門雇用者数は期待外れとなるか?

本日は、米雇用統計に注目が集まります。失業率は3.9%で横ばいとなるものの、非農業部門雇用者数は11月に18万件と、先月の15万件よりも増加すると予想されています。一方、賃金の伸びは、年率ベースでやや勢いを失いつつあると見られています。

本日の雇用統計での期待外れとなるリスクとしては、おそらく一連の労働市場の減速を示す経済データを受けて、下振れとなることでしょう。S&Pグローバル総合PMIといった企業調査によると、企業はコスト抑制のため雇用を削減しており、雇用の伸びは、2020年半ば以以来の低水準となりました。同様に、ADPによる雇用レポートも予想を下回りました。

そうはいっても、失業率は歴史的に低いままで、米経済全体でも大量解雇の兆候は見られないことから、本日の雇用統計が期待外れとなる余地は限定的と言えます。したがって、これまでの米経済データは、労働市場の失速を示唆しているものの、雇用主は解雇に踏み切っておらず、単に雇用が減少していることが示されています。

本日の米雇用統計が予想を下回る場合、市場はFRBによる来年の大幅な利下げに踏み切ると判断し、その結果米ドル下落となる可能性があります。とはいっても、米ドルのより広範な軌道は、来週の米インフレレポートとFRB政策金利会合(FOMC)の決定次第となるでしょう。

グーグル株急騰で米株価も上昇

米株式市場は昨日、グーグルが最新の人工知能モデルを発表し、株価が5%以上も押し上げられ、ハイテク企業の株も上昇し、AI関連株の上昇が再開しました。

一般的に、株式市場は現在完全を織り込んでいます。バリュエーションは割高で、来年の世界経済の減速と、歴史的に市場パフォーマンスを低下させる米大統領選に向けて、企業収益の想定はやや楽観的に見えます。株式のリスク/リターンは、そのためそれほど魅力的ではないようです。