マーケットコメント―ゴールドと株価は最新の高値より後退

投稿日: 2023年12月5日19時05分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・ゴールドは史上最高値より反転して下落
・米ドル回復、本日の米ISM非製造業指数に注目
・大手ハイテク株下落で株価は後退

ゴールドは最高値から下落

世界最古の安全資産であるゴールドは今週、史上最高値を更新するまで急騰した後、急激に下落して昨日取引を終えました。昨日のゴールドの日中のレンジは、1オンス当たり115ドルで、ゴールドの価値全体の5%以上を占めています。

このゴールドの急落には、米ドルと実質利回りの回復からの大きな利益確定の流れによるもと思われます。ゴールドは米ドル建てで保有に利息が生じないことから、米ドルと利回りの回復から買いへの意欲を減退させる要因となります。

ゴールドの広い範囲でのトレンドは、依然として強気に見えますが、急騰の勢いを維持することができず、突然の下落となったことには、チャートの観点からは懸念材料となり、急騰後に価格が急落する「ブローオフトップ」の見通しが見られます。したがって、さらなる下落も否定できず、その場合の焦点は、2,008ドル付近に移行する可能性があります。

今後のゴールドの展開としては、地政学と金利予想経路、そして世界の中銀による保有量増加、また経済情勢の進展などの要因が影響することになるでしょう。そういった意味では、世界経済が勢いを失い、中央銀行が緩和サイクルに突入する来年は、ゴールドにとっては好材料が並び、上昇するチャンスとなるかもしれません。

ゴールドの最大の下振れリスクは、ウクライナでの和平交渉による地政学的な需要の低下となる可能性があります。おそらく、それに至るには来年の米国大統領選挙での大統領の交代が必要となるでしょう。

米ドルはいくらか回復

ユーロ安の流れは、為替市場全体に影響し、ユーロ圏の経済データの軟化と、世界の中銀に先立ってECBによる利下げが実施されるとの憶測から、ユーロは続落しています。ユーロ圏は、すでにテクニカルリセッションに陥っており、インフレが減速する中、もはやECBによる利下げ観測を否定するような材料はありません。

米ドルとユーロは、表裏一体と表現されるように正反対の動きをすることから、特に米国債利回りが回復する中、昨日のユーロ下落での米ドル回復は自然なことでした。本日のJOLTSによる米求職件数と米ISMサービス調査などの経済データが、今後の米ドル回復が持続されるかどうかを決定することになるでしょう。

オーストラリアでは、オーストラリア準備銀行が本日、引き締め対策を緩和し、今後の追加利上げの必要性について不透明さを示唆したことから、豪ドルが下落しました。しかし、本日の最新の中国総合PMIから、サービス業が回復しつつあることが明らかになり、中国の動向に敏感な豪ドルの大幅な下落は免れています。

株式市場は下落基調

米株式市場は昨日、S&P500は0.5%下落し、ハイテク株の多いナスダックも1%以上下落するなど、混乱に見舞われました。もちろん、この下落は、ソフトランディングへの期待に後押しされた11月の3指数すべての驚異的な上昇に続くもので、この後退も一時的な動きにすぎません。

株式市場は現在、完璧に織り込まれています。バリュエーションは歴史的に見ても、S&P500は19倍の先物利益で取引されている一方、収益性は過度に楽観的に見積もりされいます。アナリストも、来年の利益成長率を11%以上と予想し、景気減速に向かう可能性が高いと見ています。

したがって、株価には既にソフトランディングが完全に織り込まれており、特に大統領選を控えた来年に、市場のパフォーマンスが下回る傾向になることを考えると、この期待が現実と一致しない場合、市場の失望の余地が残されています。