マーケットコメント―米PCE指数上昇鈍化で米ドル下落、本日のFRB 議長の発言に注目

投稿日: 2023年12月1日20時19分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・米インフレと個人消費の低下で、本日のFRB議長の講演前に米ドル下落
・ユーロは安定、株価は11月の上昇幅を拡大
・OPECプラスによる自主減産発表も原油先物は下落

米PCE指数上昇鈍化を市場は大歓迎

昨日、米国とユーロ圏ともに、インフレが2021年ぶりの水準まで低下したことから、ECBとFRBによる緩和政策開始の時期が前倒しされ、利下げ観測への憶測が過熱しました。特に、ユーロ圏の総合CPI(消費者物価)指数は、ECBの目標である2%からわずか0.4%以内に近づき、2.4%まで低下しました。

FRBがインフレの測定値として使用する米コアPCE(個人消費支出物価)指数は予想通りで3.5%まで減速し、金利は遅かれ早かれ引き下げられるとの見解を強く裏付けました。

第4四半期の最初の月である10月の米個人消費の減速は、投資家の安堵感となりました。米経済は依然として堅調であり、インフレの上振れリスクは、景気後退に陥っていると考えられるユーロ圏よりも米国のほうがはるかに大きいといえます。したがって、個人支出の低下は、このインフレ加速のリスクの低下と考えられます。

米PCE指数低下で米ドル下落、ユーロは安定

ユーロ圏のCPI指数によってユーロは下落し、その結果米ドルは広範囲で回復しましたが、米PCE指数の発表後、米ドルはすぐには反応しませんでした。しかしその後、テクニカル調整が機能したようで、米ドルは本日も下落を再開し、11月に他の主要通貨に対して3%の価値を失いました。

一方ユーロは、本日安定しているようですが、1.10ドルを一時的に上回った水曜日よりも下回っています。

ユーロ圏のCPI指数の減速で、ECBによる利下げ観測が再度織り込まれ、5月に利下げを開始すると予想されるFRBに対して、ECBは4月にも最初の利下げが行われると見られていることから、2か月にわたる米ドルに対してのユーロの上昇も疑問が残ります。

そうはいっても、FRBによるハト派への転換は、リスク選好の高まりと密接に関連してることは言うまでもなく、またユーロ/ドルの行方を左右する可能性があります。

しかし短期的には、FRBは追加利上げを完全に否定する準備はできていないように思われます。今週の一連のFRBメンバーによる発言では、ウォラー理事だけが、利下げの可能性に言及したにすぎませんでした。

本日二つの講演が予定されているFRBパウエル議長が、ウォラー理事に賛同せずに、今後数か月での利下げの可能性を示唆しない場合、米ドルは回復を開始するかもしれません。本日、市場は11月の米ISM 製造業購買担当者景気指数にも注目することになるでしょう。

12月の株式市場は前向きでスタート

株式市場では、昨日の米株式市場での堅調な上昇に続いて、欧州の株式市場も急上昇して12月最初の日の取引を開始しました。企業決算への見通しへの懸念がハイテク株の重荷となりナスダックは下落傾向にあるものの、欧米の利下げ観測が今週高まる中、リスク資産を押し上げています。

セールスフォースの株価が予想以上の収益を報告したことから急騰し、ダウ・ジョーンズは予想外に上昇し、今年最高値まで上昇しています。

しかし、アジア市場は本日、アジアでの製造業PMIが期待外れとなったことから、センチメント悪化となっています。一方、財新製造業PMIは予想以上に上昇しましたが、中国経済への懸念緩和とはなりませんでした。

そうはいっても、世界での株式市場は、11月に一年で最も好調な月を迎えました。

OPECプラスによる原油減産計画発表も原油価格に変動なし

しかし、原油には同様のことは言えず、原油先物は2か月連続で下落基調となっています。OPECプラスは昨日の会合で、大方の予想通り、新たな減産計画を発表しました。OPECプラスは、現在の130万バレル減産の延長とともに、さらに来年の第1四半期での90万バレルの追加減産に同意しました。

しかし追加減産は、各国自主的に行うことが示唆されたことで、アンゴラが既に減産に不合意していることから、全ての加盟国がこの減産に従うのかどうかはまだ未定となっています。

ブレント原油先物は本日、1バレル80ドルを下回って取引を開始しました。一方WTI原油先物は1バレル75.80ドル辺りで安定して推移しています。