マーケットコメント―FRBウォラー理事が利下げ言及で米ドル続落

投稿日: 2023年11月29日19時06分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・FRBウォラー理事による利下げの可能性言及で米ドル続落
・日本円、NZドル、そして豪ドルが最も上昇
・NZ中銀は据え置き発表も金利経路は上方修正
・ゴールドはラリー継続、OPECプラス会合前に原油価格回復

FRBウォラー理事はタカ派からハト派へ転換

米ドルは昨日、全ての主要通貨に対して続落し、特に日本円、NZドル、そして豪ドルに対して大幅に下落しました。

今回は、FRBウォラー理事の発言が米ドル下落の原因となったようです。タカ派で知られるウォラー理事は昨日、米インフレが今後数か月減速し続ける場合、政策金利を低下し始める可能性について言及し、予想外に政策転換の可能性を示唆しました。この発言によって、FRBメンバーとしては初めて利下げに言及したことになります。そのため、ボウマン理事が、インフレを2%に引き下げるためなら、利上げも辞さないとの発言したことに、市場は反応しなかったのかもしれません。

さらに市場は、タカ派のFRBメンバーが利下げの検討を始めているならば、他のメンバーも来年前半での利下げに積極的になるかもしれないと考えているようです。現在、来年の利下げ観測は後押しされ、5月での0.25%の利下げが完全に織り込まれました。ウォラー理事の発言の前には、利下げは6月と予想されていました。同時に、来年末までの利下げ幅も、0.9%から1.1%に拡大しました。

これで、市場はますます木曜日の10月の米PCE(個人消費支出物価)指数に注目することになります。このPCE指数はFRBのインフレ測定値としても機能しており、本日の第3四半期の前期比コアPCE指数の速報値と、第3四半期の米GDP推計値により、市場は明日の指数の方向性について、いち早く垣間見る機会となるでしょう。

そうはいっても、今週末のブラックアウト期間突入を前に、FRBメンバーによる発言は続きます。本日はクリーブランド連銀メスター総裁による講演、明日はニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁、そして金曜日には、いよいよパウエル議長の番となります。

日本円、NZドル、豪ドルは昨日上昇、NZ中銀は金利据え置きもタカ派維持

一方、日銀がマイナス金利の終焉を検討しているとの昨日の報道を受けて、米利下げへの期待とともに、円高が進行しました。しかし、本日のアジアセッションでは、日銀安達審議委員が、緩和政策の維持と必要に応じて追加緩和策を講じると述べたことから、米ドルの下落は146円50銭辺りで一服しました。

本日、ニュージーランド準備銀行が政策金利を5.5%で据え置き、インフレは依然として高すぎであるとし、インフレ圧力が予想以上に強くなる場合、利上げの必要性も可能性も示唆しました。このため、NZドルも日本円に続いて最も上昇しました。ニュージーランド準備銀行はまた、オフィシャルキャッシュレートの金利経路を上方修正し、金利のピークまでには0.25%の追加利上げを行うことも示唆しました。

豪ドルも昨日大幅に上昇しましたが、本日はオーストラリアの10月のCPI指数が、商品価格の低下から予想以上に緩和し、上昇の勢いを維持することはできませんでした。豪コアCPI指数は前年比では5.4%から5.3%とわずかに減速しました。豪ドルは本日後退していますが、オーストラリア準備銀行による予想金利経路は、依然として0.25%の追加利上げの可能性を40%としており、米ドルに対する豪ドルの広範での回復には、それほど影響はないと見られます。

ゴールド急騰、OPECプラスの合意を前に原油価格は回復

FRBウォラー理事の利下げ言及は、ゴールド市場には好材料となり、5月10日に更新した2,050ドルの高値辺りまで上昇しています。来年の利下げへの期待は、利回りの発生しないゴールドのような資産には、ますます魅力的な条件となります。

エネルギー市場では、明日予定されているOPECプラスによる会合前に、市場はショートポジションを増加することに消極的なようで、原油価格は2%近く上昇しました。一部の報道では、OPECプラスのメンバーは妥協に近づいているとも示唆されています。

この原油価格の回復は、米ドル下落から加速したのかもしれません。明日OPECプラスが合意を発表したとしても、この回復が継続される可能性は低いと言えます。合意するとの報道でも原油価格が回復しなかったことから、OPECプラスが原油減産の延長に同意したとしても、この会合の延期となった意見の相違がなければ、加盟国はさらなる合意となっていただろうと市場は見ているためでしょう。