マーケットコメント―今週の一連の重要な経済指標を前に米ドルと原油価格は続落

投稿日: 2023年11月27日20時23分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・米ドル軟化で主要通貨とゴールドは新高値まで上昇
・今週の米PCE指数とFRBメンバー発言が今後の方向性の手掛かりに
・OPECプラスの決定前に原油価格下落

米主要経済データを控え、市場は警戒しながらも前向き

先週の感謝祭の大型連休の後、今週は重要な米経済データの発表が続くことから、市場は米インフレの動向とFRB金利経路の予想への手掛かりを探るべく、本日の市場は慎重なスタートとなりました。FRBによる利下げ幅は、1%近くから先週は0.8%強まで縮小しましたが、全体として、FRBだけでなく、他の主要中銀も来年半ば頃に利下げを開始するとの憶測が広まっています。

主要経済の成長が軟化する中、リスク資産の見通しは、借入コストの低下への期待によって、ほぼ支えられているため、現在の強気トレンドに打撃となるかもしれません。

FRBメンバーの発言と米経済データに注目が集まる中、米ドル軟化

FRBは他の中銀よりも引き締めを行っており、インフレ率の低下も加速していることから、利下げ観測もより後退し、米ドルは下落しています。

しかし問題となるのは、米インフレが目標である2%まで低下するにはまだ時間がかかることで、FRBのメンバーも今週予定されている講演等で、この現状について警告すると考えられています。

明日から、一連のFRBメンバーによる発言が予定されており、特に金曜日のパウエル議長による講演が最も注目されるでしょう。その後、来月12日、13日に予定されているFRB次回会合(FOMC)に向けて、ブラックアウト期間に入ります。

しかし、これまでもそうだったように、今後の米経済データが、引き続き来年の緩和政策を後押しするような結果となる場合でも、市場は利下げ後退への兆候を無視する可能性があります。今のところ、今週の経済データは、まだ利下げ後退となるような数値は予想されていないようです。

今週最も注目となる米コア個人消費支出(PCE)価格指数は、10月に3.5%の上昇と、さらに低い伸びが予想されています。

米ドルは本日も圧力に晒されており、他の主要通貨に対して小幅下落しています。米国債利回りもわずかに低下しました。

主要通貨は米ドルに対し上昇再開も今後のリスクに注意

米ドル安の中、ポンド、豪ドル、NZドルそしてスイスフランは、数か月ぶりの高値まで上昇し、ユーロも先週の高値である1.0964ドル辺りまで上昇しました。先週のイングランド銀行ベイリー総裁とオーストラリア準備銀行ブロック総裁によるそれぞれのタカ派発言により、特にポンドと豪ドルは上昇しました。

堅調な英経済指標とイングランド銀行総裁による金利の「より高く、より長く」維持するとの姿勢はともに、ポンドの支援材料となりました。同様に、オーストラリア準備銀行のタカ派姿勢は、中国の経済回復への懸念が増長する中、豪ドルにとってはサポートとなりました。水曜日には、豪月次CPI指数が発表となり、豪ドルの短期的な見通しには極めて重要となります。

ニュージーランド準備銀行による政策決定を水曜日に控え、これ以上の利上げは予定されていないものの、NZドルも上昇しています。

木曜日にはユーロ圏の11月CPI指数速報値が減速すると予想されていますが、ややリスクオンのムードがユーロの米ドルに対しての上昇を維持しています。

原油価格は下落、ゴールドは上昇開始

一方原油価格は、主要生産国が来年の原油減産計画の延長を発表するとの予想されているにもかかわらず、依然として需要への見通しは暗いことから、下落を再開しました。OPECプラスによる会合は木曜日に延期となり、大幅減産の可能性も否定できませんが、市場は会合延期となった参加国内での不合意から、減産計画への意欲がないとの兆候と見ているようです。

原油先物価格は、1%ほど下落して取引されていますが、ゴールドは上昇しており、6か月以上ぶりの高値である2,017.82ドルを更新しています。

FRBの利上げ終了との見解により、米長期金利は低下する中、ゴールドは急騰しています。今後のFRBのハト派への転換と米ドル安への期待と、イスラエルとハマスの紛争が停戦を延長し、この地域の紛争の大幅緩和となることへの期待とともに、より広範な市場のセンチメントを向上させているようです。