マーケットコメント―FRB議長のタカ派発言で株式市場のラリーは一服、米ドル上昇

投稿日: 2023年11月10日19時55分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・FRBパウエル議長はさらなる引き締めも躊躇せずと発言
・米長期金利上昇で米ドル続伸、株価下落
・不利な状況でのゴールド上昇は世界の中銀が保有量増加か?

パウエル議長のタカ派発言で米ドル上昇

FRBメンバーは今週も、非常に堅調な米経済を強調し、インフレ抑制への追加利上げの必要性を説いています。これら一連の発言には、あたかも市場による今後の利下げへの期待に対して団結して牽制を試みているようにも見えます。

パウエル議長も昨日、必要とあらばFRBは引き締めも躊躇しないと発言し、他のメンバーに同調しました。同様に、議長はFRBがインフレに打ち勝つための制限的な政策に十分達したとは確信できないと言及しました。

このパウエル議長のタカ派発言に対して、市場は通常の反応を見せました。米国債利回りは上昇し、米ドルは金利優位性が高まり、上昇しました。需要が極端に低下した米30年債の入札が期待外れだったことも、これらの動きを増幅させたと思われます。

焦点はこれから、金利経路の憶測への手掛かりとなる来週の米CPIレポートに移ります。大きな視点からいうと、投資家に直面する課題は、どの中銀が一番早く利下げを実施するのか、そしてその利下げ幅はどれくらいになるのかでしょう。米経済の底固さから、FRBが緩和政策に着手するのは最後と見られており、米ドルには好都合となります。

株価下落、英GDPは予想上回るもポンド上昇ならず

米長期金利の上昇から、米株式市場は昨日、下落しました。パウエル議長のタカ派発言も、米株価の8日連続の上昇を止まらせました。S&P500は、下降トレンドライン付近まで下落し、0.8%安で取引を終え、今週の上昇分全ては帳消しとなりました。

今月の米長期金利の低下から、企業の決算報告が特に順調ではないものの、株価は急上昇していました。確かに、企業収益の伸びは予想外に上振れで、昨年より5%ほど上昇していますが、GDPの名目成長率は6%という環境の下となります。したがって、経済の勢いが収束し出すと、企業収益にはどのような影響を及ぼすのかに疑問を投げかけ、来年の利益成長率12%との見解が非現実的であるように見られます。

一方イギリスでは、四半期GDPが予想外に上昇しましたが、ポンド上昇とはなりませんでした。英経済は、第3四半期に停滞し、小幅な縮小という予想を上回りました。しかし、企業投資が落ち込み、暗い見通しを示唆する企業調査とともに、英経済の最悪の事態はまだ訪れてはいないことが示されています。

不利な状況もゴールドはやや上昇

米長期金利と米ドル上昇というゴールドにとってはマイナスな環境にもかかわらず、昨日のセッションでゴールドが上昇したことは奇妙な現象でした。ゴールド保有には利息が発生しないことから、米長期金利の上昇は不利な条件となります。同様に、ゴールドは米ドル建てであるため、外国人の投資家にとって、ドル高により購入コストが高くなります。

したがって、ゴールドへの不利な条件は、おそらく世界の中銀によるゴールド保有量増加といった直接購入によって、帳消しとなったようです。そうはいっても、ゴールドは今週、大幅な下落に向かっており、この要因となった背景には、中東紛争の拡大化の兆候がなかったからかもしれません。

中東での紛争は悲惨な状況ですが、周辺諸国を巻き込むほど制御不可能とはなっていません。この紛争の拡大化はまだ現実とはなっておらず、市場は戦争の大災害からの護身のため、ゴールドのロングポジションの一部を手放し始めたようです。原油価格の急降下も同様な背景があるでしょう。

本日の注目となるデータは、ミシガン大学による消費者信頼感指数となるでしょう。