マーケットコメントー米債利回り低下でドル下落、株価は安定

投稿日: 2023年10月24日21時43分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • 米利回り5%台突破も大幅下落、ドル低下
  • ・ゴールドと円は上昇なし
  • ・期待外れの企業調査でユーロ回復に至らず

米債利回り低下でドルに打撃

米国債利回りの激しい上昇がついに勢いを失い、世界市場は昨日、一息つきました。 米10年国債利回りは一時、5.0%台を超え、株式などリスク資産を脅かしましたが、最終的には大幅に下落して、4.85%付近で取引を終えました。

米国債年利5%は、投資家を債券市場に引き戻すのに十分だったようで、著名投資家2人による先行きの暗いコメントも、買いの勢いに拍車をかけました。米著名投資家のファンドマネジャー、ビル・アックマン氏は、自身のファンドを高利回り取引から撤退したとツイート。また債券アクティブ運用会社ピムコ(PIMCO)共同創設者のビル・グロース氏は、今四半期に米国は景気後退に入ると警告しました。

不況環境下でも債券はパフォーマンスが高い安全な資産とみなされており、著名投資家によるこのような警告で、一部の需要が触発され、利回りを押し下げました。利回りが後退する中、米ドルは金利の優位性が失われて打撃を受け、ドル指数は1か月ぶりに最安値となりました。

問題は、この現象が、単に利回りの上昇傾向に対する修正なのか、それとも昨日の事態が、この上昇相場の天井突破だったのかということです。米財務省は、巨額の財政赤字を補填するため、新たに国債を発行して大量に市場に供給し続けていますが、経済の見通しも暗くなっています。したがって、これは債券の需要・供給の古典的な戦いであり、どちらが優位になるかは、おそらく今後のデータが決めるでしょう。

株価は安定、ゴールドと円は変動なし

米利回りの低下は、株式市場にとって心地良い響きとなりました。利回りの低下により、債券購入の魅力が薄れ、投資家はよりリスクの高い戦略に向かいました。ナスダックは大幅な下落の帳消しとなり、0.3%高で取引を終えました。仮想通貨は上昇し、規制突破が差し迫っているとの期待が高まる中、ビットコインは今週、13%上昇しました。

ゴールドはこの流れに乗っていません。実質利回りと米ドルの下落にもかかわらず、ゴールドは今週、上昇しませんでした。前向きな状況においてもゴールドが上向きにならないことは、市場が中東での緊張と共存することを学ぶ中で、安全な避難所としてのゴールドの需要が減退しつつあることを示しています。

同様に、米国の利回りと原油価格が下落する中でも、日本円は対ドルで上昇していません。日銀が金利上昇を抑制するために再度実施した債券買い入れオペが、円安の原因となった可能性があります。

PMI統計を受けてユーロ打撃

昨日の米ドル下落で最大の恩恵を受けたのはユーロでした。ユーロは、原油価格の下落にもある程度助けられ、目覚ましい回復を見せましたが、いくつかの期待外れの企業調査結果を受けて、火曜日には回復に至りませんでした。

最新のPMI(購買担当者景気指数)調査は、ユーロ圏経済は「悪化の一途をたどっている」と警告しました。新規受注が減少し続け、企業の雇用も停滞しています。この調査結果は、ユーロ圏が緩やかな景気後退に向かっているとの懸念を強めるものであり、ECBが金利の高水準をいつまで維持できるか疑問を投げかけています。

この点で、ユーロの見通しは明るくありません。ユーロは、経済ファンダメンタルズの悪化や、ECBの利下げが来年、市場予想よりも早く実施されるリスク、さらにユーロ圏の交易条件を圧迫する原油価格の高騰に直面しています。したがって、ユーロの上昇があったとしても、短命に終わると思われます。

英国でも、企業調査は同様の暗い状況を映し出しましたが、それほど破滅的ではありませんでした。今後は、本日この後発表される、米国の調査結果が注目されます。