マーケットコメントー米利回りの急上昇で株式市場に打撃

投稿日: 2023年10月23日21時45分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • 米国債利回りの激しい上昇で株式市場に打撃
  • 地政学的リスクの激化が見られない中、ゴールドと原油の価格は下落
  • 主要イベントを前にユーロ/米ドルは安定、円は日銀の報告書に影響されず

株式市場に激震

米国債利回りの大変動による衝撃が、株式市場に激震を引き起こし始めました。地政学的な懸念と米国利回りの急激な上昇が重なり、投資家はリスクの高い資産を回避しようと躍起になり、米株式市場の株価は先週、急落しました。

米国政府が巨額の財政赤字を補てんするために国債発行を増額し、一連のプラスとなるデータの発表を背景に、FRBが「より高く、より長く」金利を維持する立場を説く中、債券市場の需要供給面では、金利上昇を支持する変化が生まれています。10年債利回りは先週、2007年以来、初めて5%に達しました。

投資家が国債などの安全資産で年率5%のリターンを獲得できれば、リスクの高い戦略を取る可能性は低くなります。これが、最近の低調な株式市場の理由を説明しています。債券利回りの上昇は、株式に代わる魅力的な選択肢となるだけでなく、企業の借り入れコストを増大させ、ひいては利益拡大の余地に制限をかけることになります。

全体として、株式市場を取り巻くリスクは下向きとなっているようです。来年の利益成長率は12%とのアナリストの想定の下、S&P500指数は依然として18倍の予想PERで取引されています。したがって、利回りの猛烈な急上昇にもかかわらず、評価倍率は実際には圧縮されておらず、一方で、世界的な景気減速に向けて、予想される利益の伸びは楽観的すぎるようです。実際には、こうしたバラ色の期待に応えられないリスクがあるのです。

今週は決算報告の相次ぐ発表が予定されています。明日にはマイクロソフトとグーグル、水曜日にはメタプラットフォーム、木曜日にはアマゾンによる発表があります。

ゴールドと原油価格は一服

今月は地政学的懸念を中心に展開しました。中東で突如、勃発した紛争に市場が動揺し、ゴールドなどの安全な資産や原油などの商品への需要が殺到しました。同紛争地域の緊張が高まれば、これらの商品の供給の流れが途絶える恐れがあります。

特筆すべきは、ゴールドの価格が、地政学的緊張のバロメーターとして機能してきたにもかかわらず、債券や日本円などの他の伝統的な安全資産は、ほぼ影響を受けず、紛争に対して反応していないことです。言い換えれば、市場における地政学的緊張の影響は、少数の金融商品のみに限られているようです。

ゴールド関しては、現在、下方修正の影響を受けやすいようです。安全資産への需要が実質利回りの急上昇による売り圧力を圧倒したため、ゴールドの相場は2営業週間で、約9%上昇しました。とはいえ、ウクライナ侵攻後に見られたように、市場は地政学的リスクとの共存を学ぶ可能性があります。事態が深刻化せず、安全資産の需要が枯渇すれば、ゴールドはその低調なファンダメンタルズとの再調整を余儀なくされるかもしれません。

主要な発表を控え、外国為替市場は落ち着き

月曜日の外国為替市場には落ち着きが漂い、ほとんどの通貨ペアは、比較的狭いレンジ内で、明確な方向性を示さずに取引を終えました。とはいえ、これは嵐の前の静けさに過ぎず、今後、ボラティリティを高める一連の大きな発表が待っています。

火曜日に発表される最新の景気調査では、ユーロ/ドルが台風の目となるでしょう。木曜日にはECBの決定と、米国四半期GDP報告書の発表が予定されています。

最後に、円は対ドルで150円付近で推移しており、日銀が来週の会合で、さらなる政策微調整を検討する可能性があるとのメディア報道を活用できていない状況です。円はより大きな問題を抱えており、米国利回りの継続的な上昇と、原油価格の高騰に直面しています。