マーケットコメント―堅調な米小売売上高でFRB利上げ観測が復活

投稿日: 2023年10月18日18時23分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・米小売売上高は予想以上に上昇でFRB利上げ観測高まる
・英賃金上昇減速でポンド下落も予想以上の英インフレ上昇でポンド回復
・堅調な中国経済データで豪ドルとNZドル上昇、原油価格急騰でカナダドルも上昇
・米株式市場は強弱まちまち、ゴールドは安全資産へのフローから続伸

堅調な米小売売上高から米ドルはサポート、米国債利回りも上昇

昨日の米ドルは、ポンドと日本円、そしてNZドルに対しては上昇しましたが、ユーロと豪ドル、そしてカナダドルに対しては下落するなど、他の主要外貨に対して強弱まちまちで取引を終えました。スイスフランに対しては、実質的に横ばいでした。

9月の米小売売上高は、予想以上に上昇したことから、米経済の第3四半期は堅調であったことが示唆され、米ドルは多少買いの圧力を受けました。この小売売上高のデータを受けて、ゴールドマンサックスは、米GDPの年率成長率を3.7%から4.0%に引き上げ、アトランタ連銀によるGDPNow での予想も5.1%から5.4%に上方修正されました。

この上方修正は、米ドルよりも米国債利回りに影響を与えたようです。市場がFRBによる引き締めサイクル終了前の最後の利上げの可能性を再検討したことから、10年債国債利回りは3%近く上昇しました。FF金利先物によると、市場は現在、1月までの0.25%の利上げを約55%と織り込んでおり、来年末の金利を月曜日に設定した4.7%を引き上げて約4.8%と予想しています。

今後FRBメンバーが、米国債利回りの上昇から、これ以上の利上げは必要ないとの見解を維持するか、または堅調な経済データから利上げを支持するのか、市場はおそらく、明日のパウエル議長の発言を含めて注目することになるでしょう。本日は、ニューヨーク連銀ウィリアムス総裁とフィラデルフィア連銀ハーカー総裁、そしてウォラー理事、クック理事、ボウマン理事による発言が予定されています。特にボウマン理事は、先週の予想を上回った米インフレ数値の発表前でさえ、追加利上げ支持を表明している数少ないメンバーの1人です。

英CPI指数上昇でポンド回復、中国の堅調な経済データから豪ドルとNZドル上昇

8月の英雇用データにて、賃金上昇が過去最高から減速し、求人件数も減少したことが示唆されたため、ポンドは米ドルに対して下落しています。英失業率を含めた労働統計の発表は来週まで延期されました。

昨日の英雇用データは、イングランド銀行による追加利上げ観測の重荷となったかもしれませんが、本日の予想以上に上昇した英インフレ数値により、追加利上げ観測が復活する可能性があります。イングランド銀行による11月での最後の0.25%の利上げはわずか24%ですが、来年の3月までの利上げは、60%ほどまで上昇しており、ポンドは昨日の損失の一部を取り戻るべく回復しています。

オーストラリア準備銀行の前回会合での会議録が公開され、金利据え置き決定の背景には、利上げを推進するメンバーがいたことが明らかになり、豪ドルは上昇しました。これにより、市場は、来年3月までのオーストラリア準備銀行による利上げ観測を完全に織り込みました。一方ニュージーランドでは、CPI指数が2年ぶりの低水準となったことから、ニュージーランド準備銀行による今後の利上げ観測は後退し、NZドルも下落しました。本日の中国経済データが、第3四半期に予想以上に経済成長の加速を示唆したことから、豪ドルとNZドルはともに、本日上昇基調です。

カナダドルはまた、予想を下回るインフレデータから打撃を受けて下落しましたが、おそらく原油価格の高騰から、すぐにこの損失を回復し、それ以上に上昇して取引を終えました。ガザ地区の病院での爆発から、イスラエルとパレスチナの紛争激化への不安と、その結果、原油供給への混乱を招くことへの懸念もあり、原油価格は上昇しています。

ナスダック下落、中東での紛争激化への懸念からゴールド続伸

米株式市場は昨日、ダウ・ジョーンズとS&P500が実質横ばいで取引を終えたのに対し、ナスダックは下落するなど、強弱まちまちとなりました。堅調な米小売売上高を受けて、市場がFRBの金利予測経路を上方修正したことが、金利に敏感なナスダックの重荷となったようですが、それだけが原因ではないようです。

ハイテク株が多いナスダック指数は特に、より高度な人工知能(AI)用半導体の中国への輸出停止計画の発表という米政府の決定が影響したのかもしれません。エヌビディア株は、この発表後下振れギャップで取引を開始した後すぐに下落し、その後いくらか回復しました。本日は、閉場後にテスラとネットフリックスによる決算報告が予定されています。

ゴールドは、引き続き上昇しており、本日は0.80%ほど上昇しています。これは、中東での紛争の中、ゴールドは投資家にとっての安全な避難所となっていることを示唆しています。昨日、ガザ地区の病院は爆撃を受け、数百人が命を失い、イスラエルとパレスチナはともに、この攻撃についてお互いに非難しています。おそらく、この攻撃によって、これまでの終戦に向けた外交努力への期待は打ち砕かれ、さらなる紛争の激化への恐怖心を煽うことになるかもしれません。