マーケットコメント―予想外のCPI指数上昇で米ドルは回復へ、株価下落

投稿日: 2023年10月13日19時01分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・予想以上に堅調な米CPI指数でFRB利上げ観測再浮上
・米国債利回り上昇で米ドルは再び回復、今週は上昇か
・株価に圧力も第3四半期の決算期を前に売りは限定的

FRBハト派観測も米CPI指数の上昇で今後は不透明

昨日、9月の米CPI(消費者物価指数)が予想以上に上昇したことから、FRBが利上げを終了したとの期待が後退し、市場も動揺しました。インフラの測定となるCPIは、前月比で予想の0.3%を上回り、0.4%上昇し、前年比も予想の3.6%まで緩和から3.7%と横ばいとなりました。

今週、FRBメンバーによるタカ派を抑えた発言が続いたことで、米国債利回りの急上昇は一服しましたが、昨日のCPI指数は、インフレが依然として上振れのリスクがあることを市場に思い知らせた結果となりました。ガソリン価格の上昇は8月ほどではありませんでしたが、引き続き9月の総合インフレを押し上げました。しかしCPIの月間上昇への最大の原因は、家賃価格の上昇であり、FRBが引き締まり政策に終わりを告げる前に、もう一度熟考する可能性があります。

昨日のインフレデータ発表後、今後数か月での最後の利上げへの確率は、一時40%ほどに上昇し、その後やや緩和しました。米経済の指標がまちまちとなっていることから、最近の焦点は、12月と来年1月のFRB会合にて、時間をかけて状況を判断することが求められています。10月31日から11月1日にかけて開催される次回のFBR会合(FOMC)では、もはや利上げは織り込まれていません。

米国債利回りは高値から低下も米ドルは今週上昇か

昨日のCPI指数発表前には、利上げ観測は30%以下まで低下していましたが、先物市場の緩やかな再修正は、債券市場や為替市場において、大きな動きに拍車をかけたようです。米10年債利回りは昨日、4.7282%まで0.15%上昇し、米ドルも約1%上昇しました。低調な米30年国債入札が嫌気し、債券売りが悪化しました。

本日の国債利回りは低下しており、米ドルも軟化していますが、ユーロやポンドといった下落基調の通貨の回復には既に打撃を与えています。

本日、FRBメンバーの発言は控えめとなることが予想され、また、唯一の主要経済データは、ミシガン大学消費者信頼感指数の発表となることから、米ドルはある程度の上昇で週を終える可能性が高いでしょう。

中国経済への懸念再浮上でムード悪化に

昨日最も下落した通貨の一つは豪ドルで、FRBによる引き締め懸念の再浮上でリスクオンのセンチメントが悪化したことから、約1.5%下落しました。豪ドルとNZドルはともに、軟調な中国の経済指標を受けて、本日も圧力を受けています。

9月の中国の生産者物価指数と消費者物価指数が予想を下回ったことから、中国政府による最新の刺激策が、内需を押し上げるにはあまり功を奏していなかったことが示唆されました。しかし貿易統計では、9月の輸出の減少が予想されたほど大幅に減少しておらず、多少の朗報となりました。

原油価格は再度回復へ、ゴールドも上昇を再開

原油先物は、ロシア産原油の上限価格である60ドルに違反したとして、米政府が2社への制裁を発表したため、軟調な経済データにもかかわらず、2%以上上昇しました。ロシア産原油を輸送する船舶会社への制裁は今回が初めてで、主要7か国であるG7によるロシア産原油の価格上限の執行を強化する西側の新たな動きを示唆しています。

原油価格は本日、昨日の米CPI指数と、米国での週次原油備蓄率の急増からの売りによって下落した損失を打ち消す以上に上昇しています。

一方ゴールドは、米国債利回りの回復による昨日の下落は限定的だったようで、本日上昇を再開しています。ゴールドは、1オンス1,885ドルに近づき、今週の上昇は2.9%と、3月以来の好調な推移となっています。先週末にハマスから奇襲攻撃を受けたイスラエルはガザ地区への攻撃を強化しており、中東情勢の緊張は、ゴールドを押し上げる可能性があります。

米国債利回りの低下後、株式市場は大手銀行の決算報告に注目

株式市場では、昨日の米株式市場におけるマイナスの終値が、本日のアジア市場と欧州市場にも重荷となっているようです。現時点では、利回りの修正は単なる修正と見られており、確信をもって利回りがピークに達したと判断するにはまだ時期尚早です。次期会合にて、FRBが利上げを行わないとしても、インフレ率が2%まで低下するにはまだ時間がかかるとのリスクは無視し難いでしょう。また、来年に期待される3回ほどの0.25%の利下げが実施されるにしても、株式市場にはまだ予定通りにいかない要素が多々あります。

暫くの間は、株式市場の焦点は、本日大手銀行を皮切りとして開始される第3四半期の企業の決算期となるでしょう。JPモルガン・チェース銀行とシティバンク銀行、そしてウェルズファーゴ銀行が、本日の株式市場閉場前に決算報告をする予定となっています。