マーケットコメント―米ドル後退、株価は今四半期下落から若干回復

投稿日: 2023年9月29日19時35分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・米国債利回りの上昇一服で米ドルも高値から軟化
・株価は今年最悪の四半期となるもハイテク株は回復基調
・本日のユーロ圏と米インフレデータに注目

FRBメンバー発言で米国債利回りの急騰は一服

第2四半期最後の本日は、主要な米インフレと個人消費データの発表を前に、FRBによる金利を「より高く、より長く」との見解がやや後退したことから、債券利回りは下落しました。堅調な米経済データに裏付けされたFRBによるタカ派的見解は、先週米国債利回りの急騰を促し、大幅な利下げは当分ないとの憶測から、長期債の売りとなりました。

米10年債利回りは昨日、16年ぶりの高値である4.69%に近づきましたが、その後4.55%辺りで落ち着きました。昨日リッチモンド連銀バーキン総裁が、今後の引き締めの必要性に対して、他のFRBメンバーほど断定的ではなかったことに、市場は安堵感を示したようです。

一方で、シカゴ連銀グールスビー総裁の発言は、米経済のソフトランディングへの期待を高めることになりました。この発言の直前に発表された最新の週刊失業保険申請件数は、米労働市場が引き続き非常に逼迫していることを裏付けました。

FRBが、失業率を押し上げずに、経済を減速することが可能であるとの見解を明らかにしている中、米PCEインフレ物価指数が低下する場合、米国債利回りはさらに後退する可能性があります。コアPCE物価指数は、8月に3.9%まで減速すると予想されており、個人消費もまた減速すると見られています。

ユーロとポンドはドル安から上昇

昨日、米国債利回りが後退したことから、米ドルは圧力を受け、本日は損失を拡大しています。これは他の主要通貨にとっては、サポートとなっているようで、NZドルが最も上昇しており、続いて豪ドル、またユーロも上昇し、1.06ドルまでの回復まではなっていませんが、ポンドも上昇して、1.22ドルを超えると見られています。

イタリアのメローニ政権が、今年と来年の財政赤字目標を引き上げたことで、高債務問題が再浮上し、昨日イタリア国債が急騰しました。これで、ユーロ圏の国債利回りも上昇し、ユーロの上昇となりました。

さらに、ユーロ圏のインフレは、9月に予想以上の減速していることが本日の速報値から示唆されました。CPI指数の予想以上の低下により、ユーロ圏での経済のスタグフレーションへのリスクを後退させました。

イギリスでは、パンデミック後の回復期のGDP成長率を上方修正するとともに、第2四半期のGDP成長率も0.2%増に拡大したことが確認されました。これにより、ポンドも軟化する米ドルに対して、反発して上昇しています。

円安はわずかに一服

しかし本日、日銀が国債利回りの急上昇を制限するために、臨時の国債買いオペを実施したことから、日本円はこれまでの利益が取り消されています。日銀は、10年債が10年ぶりの高値を更新した後、5年超10年以下の長期国債を3,000億円まで買い入れました。

米ドルは現在、148円90銭辺りで取引されており、依然として介入警戒ゾーンに留まっています。鈴木財務相は本日、為替市場での「変動というものに着目している」と再び発言しましたが、米ドルが大幅に後退しない限り、今の段階では150円まで円安が進行するのは避けられないようです。日本のコアCPIレートが、9月に2.5%と予想よりも減速していることも、円安進行に拍車をかけています。

株価は小幅上昇も今四半期は損失へ

株式市場も本日は、欧州指数と米先物は上昇を示すなど、活況を呈してきました。一方アジア市場は、日本の株価が反発できず、中国市場も大型連休で休場のため、まちまちのセッションとなりました。しかし、香港のハンセン指数は、この連休が中国の消費者の支出につながるのではとの期待と、米中首脳会談の可能性があるとのレポートを受けて、2.50%上昇ししました。

政治関連では、米議会において、共和党主導の下院と民主党主導の上院が、それぞれ異なる予算案で調整していることから、政府機関の一部閉鎖の可能性が高まっています。しかし、どちらの予算案も、両院で可決される可能性は低く、超党派の合意にはまだ時間がかかりそうです。

それにもかかわらず、国債利回りの低下によって、米株式市場は上昇しており、S&P500とナスダックはともに、昨日上昇で取引を終えました。メタやエヌビディアといった大手ハイテク株の堅調な業績からも株価上昇は支えられました。

しかし、ハイテク株のディップ買いが続いているにもかかわらず、米株式市場は今年で最悪の四半期を終えそうです。次の四半期に株価が反発するかしないかは、おそらく今後の利回り次第と言えそうです。

ゴールドは、米国債と世界の国債利回りの上昇から打撃を受けており、昨日6か月振りの安値となる1オンス1,857.52ドル以下まで下落しました。