マーケットコメント―米国債利回り高値更新で株価下落

投稿日: 2023年9月22日18時34分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・米国債利回りの急騰で、株価に打撃
・米国債利回りの急騰とユーロ下落も米ドルは低調
・英中銀金利据え置きでポンド下落、日銀も現状維持でさらに円安に

米国債利回りは急上昇

米債券市場が急騰して、株式のようなリスクの高い資産にとって打撃となっています。米国債利回りは本日急上昇し、4.50%のサイクル最高値を新たに更新しました。

利回りが急速に上昇すると、他の全ての資産に影響を与えます。利回りは基本的に市場で決定される金利であるため、利回りの上昇によって、投資家は現金への配分を増やし、株式などのリスクの高い資産への投資を控えることになります。昨日、利回りの上昇とともに、この変動が現れ、S&P500 はその価値を1.6%失いました。

この利回りの上昇には、需要と供給の不釣り合いが起因しています。FRBは今週、金利経路を上方修正し、先週の失業件数も急激に減少して米労働市場の底固さを証明するなど、米経済データもFRBの見解を裏付けしています。一方で、米財務省は、財政赤字補填のため、新たに債券を発行し続け、市場には債券が氾濫しています。

FRBが金利を「より高く、より長く」維持するとのスタンスを取る一方で、来四半期に向けて債券の氾濫が予想されることから、利回りの上昇圧力はさらに持続するでしょう。

米ドルは低調

米国債利回りの驚くべき上昇とそれに伴う株式売却にも関わらず、米ドルはそれほど上昇していないことは、注目すべき状況と言えます。確かに、ドル指数は今週上昇に向かっていますが、債券市場の急騰を鑑みると、米ドルの上昇幅は見合っていないようです。

ユーロ/ドルに関しては、金利差が米ドルに有利となっているにも関わらず、今週はほぼ横ばいで取引を終えそうです。原油価格の安定は、ドイツの経済活動の回復兆候とともに、エネルギーに敏感な通貨であるユーロのサポートとなっているのかもしれません。

最新の企業調査によると、ドイツのサービス部門が9月に回復の兆候を見せるなど、ユーロ圏の経済は、深刻な減速後に安定してきているとの期待が高まっています。しかし、フランスの経済データは反対で、楽観的な見通しに影を落としています。全体として、ユーロ圏PMI数値によると、経済活動は第3四半期に縮小し、第4四半期の見通しもそれほど期待できないようで、依然として緩やかな景気後退のリスクは払拭できません。

英中銀と日銀の政策決定後ポンドと円は下落

イギリスでは昨日、イングランド銀行が英経済成長の鈍化と労働市場の緩和を理由に、金利の据え置きを発表し、市場を驚かせました。ただ、イングランド銀行は、大量の買い入れ国債の縮小について、年間800憶ポンドから1,000億ポンドに量的引き締めを加速させることを決定しました。

イングランド銀行による金利政策決定後、市場は期待外れの反応を示し、株式市場の後退を招き、ポンドは急落しました。実際、イングランド銀行による量的引き締めの決定が株式売却を促し、リスクに敏感な通貨であるポンドに波及効果として返ってきたのかもしれません。本日発表された企業調査からも、英経済の低調さが示唆され、ポンドは続落しています。

最後に日銀は本日、政策会合にて大方の予想どおり現状維持を発表しました。市場はマイナス金利からの脱却への兆候を期待していましたが、日銀植田総裁は、これまでの発言が文脈から外れて解釈されているとして、日銀による政策修正への憶測を否定したため、円安が進行しました。