マーケットコメント―本日のECB政策決定を前に焦点はユーロの行方

投稿日: 2023年9月14日18時06分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・本日ECB政策会合で利上げでも見送りでもユーロは下落か
・米インフレレポートで米ドル軟化、本日の米小売売上高に注目
・債券利回りの低下もゴールドは続落

本日のECBによる政策決定でユーロ下落か

本日の注目は、ECBによる政策会合です。市場は現在65%の確率で、利上げを行うと予想しています。経済指標によると、ユーロ圏の経済は景気後退の瀬戸際に立たされていることが示唆されていますが、基調的なインフレダイナミックスの継続とエネルギー価格の上昇によって、最後の利上げを決定すると見られています。

ECBが2024年のインフレ予測を上方修正するとの一部の報道も、本日の利上げ観測を煽っているようです。この報道は、本日の会合前の市場予測を形成するためのECBによる意図的な「リーク」であるとの見方もあるようです。

ユーロに関しては、ECBが利上げを行おうと行わなかろうと、下落基調であるようです。ユーロ圏の経済見通しが暗い中、さらなる利上げは、今まで以上に経済を圧迫する可能性があるため、政策上のミスであるように映ります。

そのため、利上げ決定によってユーロが上昇したとしても、市場が本日の利上げが経済に及ぼす影響と来年の利下げにつながるかを査定し始め、この上昇は一時的なものとなるでしょう。また、ECBが利上げを見送る場合、市場はこの予想外の決定に動揺し、ユーロはすぐに下落するでしょう。

いずれにせよ、今の段階ではユーロには有利な条件はないようです。ユーロ圏の経済成長は縮小しており、中国経済の経済減速に大きく影響をうけていることはもちろん、エネルギー価格の上昇が、経済活動とユーロ圏の交易条件にさらに負担となるでしょう。反対に、米ドルは堅調なファンダメンタルズからの恩恵を受けており、ユーロ/ドルの見通しは、本日のECBによる決定に関わらず、ますますネガティブになっているようです。

昨日の米インフレレポートも米ドルは不安定

昨日、8月の米消費者物価指数が発表され、予想をやや上回りましたが、市場の不安材料とはなっていないようです。上振れサプライズは小幅だったことから、市場によるFRBの方向性を変えるほどではありませんでした。

米ドルと米国債利回りは、CPI指数発表後、一時上昇しましたが、しばらくして後退しました。債券市場では、10年債利回りがサイクル高値である4.35%辺りで抵抗圧力をうけた後、明確なファンダメンタルズがない中、急低下したため、テクニカル的な反発のように受け止められました。

株式市場は、利回りの後退からの恩恵を受けて上昇し、その後ハイテク株やグロース株といった金利に敏感なセクターの上昇に牽引されました。そうはいっても、株式市場の見通しは決して明るいとは言えません。世界の中銀が流動性を吸収し、実質利回りが過去10年で最高値付近で取引されている中、停滞する企業収益と伸びきったバリュエーションは、株式にとっては不利な組み合わせと言えます。

ゴールド下落、本日の米小売売上高に注目

ゴールドは昨日、米国債利回りが低下したにもかかわらず、続落しました。米ドルの上昇が利回りの後退を上回り、ゴールドを1,905ドル付近まで押し下げたようです。

ドル高は、チャート上では一連の安値幅が維持されていることから、まだ継続すると見られ、ゴールドのは短期的な下振れリスクとなっています。ゴールドが再び上昇し、高値を更新するためには、景気後退への懸念が再浮上して、FRB利下げ観測が高まり、利回りが低下することが条件となり得るでしょう。

しかし、米経済指標が米経済の底固さを示しているように、このシフトはすぐには訪れないと思われます。本日の米小売売上高と8月の生産者物価指数から、市場は米経済の最新の状況を判断することになるでしょう。