マーケットコメント―米CPI指数とECB政策決定を前に株価上昇、米ドルも上昇再開

投稿日: 2023年9月12日18時37分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・明日の米CPI指数とECB政策決定に市場は注目
・米株式市場は楽観ムードで週明け
・米ドル上昇で小幅円安、ポンドは堅調な英雇用統計後も変動なし

明日の重要な経済イベントを前に市場は静観

昨日の市場は、中国経済の減速が安定する兆しと、世界の中銀が引き締めサイクルの終焉を迎えているとの期待から、今週の重要な経済イベントを前に、引き続き警戒しながらのリスクオンとなったようです。

今週の市場は、FRBの次期会合での方向性を判断する2つの重要な指標に警戒しているようです。米経済減速への懸念にも関わらず、米経済成長の勢いが十分であることを示唆する一連のデータが発表される中、明日の8月の米インフレレポートと木曜日の米小売売上高に注目が集まります。

FRB会合前に、今週木曜日にECBの政策会合が予定されています。市場は現在、金利据え置きか、0.25%の利上げかで意見が分かれています。ECBが利上げを決定する場合、市場によるFRBの利上げ観測も高まることが予想されます。

大手ハイテク株上昇で米株式市場を牽引

どちらにせよ、FRBには利上げを行う十分な材料がないと見られており、このため、今のところ、米国債利回りの上昇は一服し、米株式市場には多少の余裕が生まれています。S&P500とナスダックは、8月に更新した2か月ぶりの安値から反発しており、ナスダックは特に、テスラなどのハイテク大手の株価急騰から恩恵をうけています。

テスタは昨日、モーガン・スタンレーが自動運転車向けAIモデルスーパーコンピューターDojoを約6000億ドルの価値があると予想したことから、株価が10%も急騰しました。アマゾンの株価も急騰し、ナスダック総合指数の1.1%上昇まで導きました。

本日の焦点はアップルで、次世代のiPhoneを含む最新製品を発表する予定です。

しかし、欧州株式市場と米先物では本日、強弱まちまちで取引が終わりました。アジア市場では、中国の不動産開発大手カントリーガーデン(碧桂園)が債権者の一部と債券の返済期限を延長する契約を結んだとの報道に、当初市場は歓喜を示し、香港と中国の株式指数は変動しました。

米ドル上昇で円高から軟化

為替市場では、米ドルが他の主要通貨に対して0.2%ほど上昇して、これまでの損失の一部を取り戻しています。特に日本円に対して上昇し、現在146円70銭辺りで取引されています。

日本の10年国債利回りは、週末の日銀植田総裁の発言を受けて、本日2014年1月以来の高値まで急騰して、0.723%に達しました。植田総裁は、インフレと賃金が持続的な上昇を示す十分なデータがあれば、年末までにマイナス金利を終了する可能性を示唆しました。

この発言は日銀の予想する最善のシナリオである可能性が高く、実行可能かどうかはともかく、米ドル上昇の中、円安進行を一時的に停止させ、日銀に時間的な余裕を与えたと言えます。

堅調な英賃金上昇もポンドは下落基調

今年最も上昇している通貨の一つであるポンドでさえも、イングランド銀行が金利のピークに近づいていると示唆する中、米ドル上昇には敵いませんでした。

しかし、本日発表された英雇用統計によると、7月までの3か月間で雇用件数は予想以上に減少しているものの、平均賃金が前年比8.5%と加速していることで、イングランド銀行のジレンマが浮き彫りになりました。

本日ポンドは米ドルに対して1.25ドルを下回り、ユーロも1.0715ドルまで下落しています。市場は木曜日のECB会合にて、利上げの確率を40%ほどと見ており、利上げを決定する場合、ユーロ上昇のサポートとなる可能性があります。