マーケットコメント―日銀植田総裁の発言で円高へ、米CPI指数前に米ドル下落

投稿日: 2023年9月11日19時19分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・日銀植田総裁が賃金上昇すれば年末までのマイナス金利見直しも示唆
・米CPI指数の前に米ドルは今週下落でスタート
・中国経済への期待から豪ドル上昇、アップル株売り緩和で株式市場も上昇

日銀総裁の発言で超緩和政策の早期修正への憶測呼ぶ

日銀の植田総裁は、週末の読売新聞とのインタビューにて、早期の超緩和政策からの脱却への憶測を支持する意向を述べました。このため本日、日本円は他の主要通貨に対して上昇しています。植田総裁は、賃金上昇を伴う持続的物価上昇に確信を持てれば、マイナス金利解除もあり得ると示唆し、市場はこの発言を多少タカ派と見て、驚きの反応を示しました。

日本のインフレ指数は、2022年の春以降、総合とコアともに、日銀の目標とする2%を上回っています。しかし、賃金の伸びはここ数か月で減速しており、インフレ率が2%辺りで持続することが可能かどうかには、まだ疑問が残ります。また、賃金の伸び減速だけでなく、第3四半期の日本経済は、全体として勢いを失いつつあり、植田総裁の示唆した年末までの修正はまだ現実的とは言えません。

植田総裁のこの発言は、主に米ドルに対して、12%以上も価値を落とした日本円への防御策として発せられたと見られています。これにより、日本円は本日、11%ほどの減少にとどまり、円高となっています。

長期にわたって景気刺激策を擁護してきた日銀にとって、目標が完全に達成される前に、その緩和策からの脱却を図ることは考えにくいと言えます。しかし、植田総裁の発言から、日銀はマイナス金利を含むすべての刺激策に対して縮小する余地がある用意に入っており、また、目標の達成を待つよりは、目標が射程内となった段階で実施することを示唆しています。

米CPI指数の前に米ドル安、円高へ

このように、日本円は本日1週間ぶりの高値を付け、米ドルに対して146円台と、これを機会に円高となる可能性があります。日本円は、ユーロやポンドといった他の主要通貨に対しても、やや上昇しましたが、米ドルに対する上昇は、今週初めの米ドルの軟化からも恩恵を受けているとも考えられます。

今週の水曜日に、8月の米CPI指数、木曜日は米小売売上高の発表が予定されています。これらの経済データが、今月19日から20日に開催されるFRBの次期会合前の最後の重要なデータとなります。この会合では、FRBが金利を据え置くか、または0.25%の利上げを行うかが焦点となります。

次期会合前のブラックアウト直前、多くのFRBメンバーは金利の据え置きを示唆しており、据え置きを示唆するメンバーはほぼゼロに近いと言えます。しかし、8月のCPI指数が、3.6%まで小幅上昇することが予想されており、最新の米ISM 非製造業PMIが経済回復を示唆したことで、11月での利上げの可能性も否定できません。

これにより、本日の米ドル後退は、他の主要通貨に対して8週間連続で上昇した後の自然な調整となっていることを示唆しています。

ユーロとポンドはやや上昇

ユーロとポンドは、ユーロ圏とイギリス経済の見通しが悪化する中、米ドル安から上昇しています。ECBは、今週木曜日に政策会合があり、最後の利上げを行うのか、また、その前に一度金利を据え置くのかを決定することになります。

イングランド銀行でさえも、イギリスでの住宅市場と雇用市場に亀裂の兆候が見られることから、据え置きを検討しているようです。明日の最新英雇用統計と水曜日の月次GDPで、英経済の現状がもう少し明らかになるでしょう。

中国経済の回復への兆しで豪ドルと株価は上昇

本日、一番上昇したのは豪ドルで、中国経済への懸念が緩和されるかもとの期待から、1%ほど上昇しました。

8月の中国生産者価格は、前月比で年率下落幅が縮小しましたが、消費者物価はマイナスだった7月より0.1%上昇しました。

さらに、中国政府は日曜日に、保険会社への株式投資を促すための新しい措置を発表しました。しかし、多くの都市が不動産販売を後押しするための住宅購入制限の緩和を進めているようです。

不動産大手によるさらなるデフォルトの可能性も否定できない中、投資家はようやく景気後退の出口が見えてきたようで、中国のCSI300指数は0.7%上昇で取引を終えました。

米先物も、先週金曜日のアップル株の売りが緩和され、黒字となりました。アップルは火曜日に最新のiPhoneを発表する予定で、本日株価が上昇する可能性があります。しかし、中国による政府関係者間でのiPhone 使用禁止のニュースから、市場が多少過剰反応した可能性もあります。このiPhone使用禁止の背景には、アメリカが中国への貿易規制を強化していることへの報復と考えられています。