マーケットコメント―米中間の関係緊迫化から株式市場は下落

投稿日: 2023年9月8日19時13分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・中国政府職員内でのiPhone禁止を受けてアップル株下落、株式市場も動揺
・利回り後退で米ドル上昇にも一服も、米ドルは明るい見通し
・利回り低下と中銀のゴールド保有量増加からゴールドは上昇

米中関係緊迫化が再び市場の懸念材料に

今週の世界市場には、米中間の関係緊迫化が再び影を落とし、世界経済減速の兆候と金利上昇への対策に追われる投資家らを別のリスクにさらしているようです。

中国の政府職員間にて、iPhone使用禁止が命じられたとのレポートを受けて、アップルの株価は昨日、およそ3%ほど下落し、株式市場全体を下落に導きました。別のレポートでも、中国政府はこの禁止を国有企業やその他政府関連機関まで大幅に拡大する意向であることが示唆されています。

アップルの売上高のうち、中国での販売はおよそ5分の1を占めています。しかも、高いインフレの下、3四半期連続で前年比の売り上げは既に減少しています。

このiPhone使用禁止は、アメリカによる中国への最新の半導体輸出制限への報復と見られています。また、ファーウェイが最新のスマートフォンの発売したばかりのタイミングであることから、この禁止からファーウェイが恩恵を受けることも計算されているように見えます。これで、次に注目となるのはアメリカの動きで、この禁止に仕返しという形で反応するのかが焦点となります。

市場のリスク選好は不安定、米ドル上昇は一服

このような懸念すべきレポートにも関わらず、豪ドルやNZドルといったリスク関連通貨は本日、上昇して取引されております。しかしこの回復は、他の中国の動向に敏感な資産には反映されていません。人民元は、中国政府が為替介入を行ったとの兆候にも関わらず、対米ドルでほぼ一年ぶりの安値まで下落しました。この人民元の下落には、中国からの資産流出が裏付けされました。

米株式市場も、米中関係悪化から打撃を受けました。昨日の米主要指数は、下値を拾うディップバイヤーにより、損失の一部を取り戻しましたが、先物は本日、投資家がリスクエクスポージャーを抑制しているようで、下落でのオープンを示しています。

リスク選好は不安定のため、米国債利回りが低下しており、その結果米ドル上昇の一服となっております。しかしながら、米ドルの見通しは、深刻な経済成長の減速に見舞われている欧州や中国の経済に比べて、米経済は回復力の兆しを見せていることで、依然として明るいと言えます。

為替市場では昨年、ほぼ金利差に基づいて取引されましたが、世界の中央銀行が引き締めサイクルの終焉に向かう中、注目は経済成長の差となる可能性があり、現段階では米経済がリードしています。

ゴールドは回復、円安さらに進行で介入への懸念も

ゴールドも昨日、平均200日線から反発して回復基調です。本日もゴールドは上昇していますが、今週は全体として下落で取引を終えそうです。

実質利回りと米ドルの上昇は、ゴールドにとって良い兆しとは言えませんが、債券市場の変動を考えると、今回のゴールドの下落はそれほど深刻ではありませんでした。ゴールドを支えたのは、おそらく中国を主導とする中銀によるゴールド保有量増加だった可能性があります。

最後に日本では、鈴木財務相が過度な為替の変動に対して、「適切に」対応すると繰り返し述べました。しかし、この円安牽制発言の後も、市場に影響はなく、最終的には円安が進行しました。

円のボラティリティ水準は低いことから、市場は為替介入の可能性は引くと見ているようです。つまり、今回の円安進行のスピードが、主に昨年と比べてはるかに遅く、秩序正しいことから、日本政府は牽制はしても実際に行動しないと見ているようです。