マーケットコメント―軟調な米雇用統計も米ドル上昇、中国の刺激策で石油価格上昇

投稿日: 2023年9月4日18時26分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・比較的軟調な米雇用統計にも関わらず米ドル上昇
・中国による刺激策で石油価格とアジア株式市場は上昇
・ゴールドは米ドルと利回りの上昇も回復の兆し

予想を下回る米雇用統計も米ドルは上昇基調

先週の金曜日に発表された8月の米非農業部門雇用者数は、予想を若干下回り、6月と7月の雇用の伸びも前回発表よりも大幅に下方修正されました。この予想外の軟調な米経済データにも関わらず、米ドル上昇は維持されました。

また同時に 賃金の伸びも緩和が示唆され、市場はFRBによる今月の利上げの見送りを確信したようです。この雇用統計の結果を受けて、9月のFRBによる利上げの可能性は現在、先週の約20%から約7%まで低下しています。

先週の金曜日の雇用統計発表後、当初の市場の反応は明確で、米ドルと利回りは下落しましたが、この動きは一時的なものでした。しばらくすると、長期利回りが再度上昇し、米ドルの上昇を促しました。この反転の背景を推測するのは難しいですが、上昇する石油価格と堅調なISM製造業調査結果が一因と言えるでしょう。

今後の米ドルの見通しは、ますます順調といえます。米経済は、ユーロ圏よりも良好な状態にあり、エネルギー価格の高騰から、この乖離が大きくなり、ユーロ/ドルは、この成長格差と貿易フローの観点からも打撃となる可能性があります。ただし、米ドルの本格的な回復には、株式市場の一定期間のリスク回避が必要となるでしょう。

中国の景気刺激策でコモディティ上昇

一方中国では、一連の的を絞った刺激策がようやく市場の信頼回復に結びついてきたようです。先週、中国政府は住宅購入の制限を緩和し、育児と教育支出に対する減税を発表し、家計と不動産開発業者への支援を強化しました。

これまでの刺激策は妥協的と見られていますが、刺激策の発表は毎週増加しており、中国経済が回復に向かうことへの期待となっています。先週のコモディティでは、この慎重ながらも前向きなムードが反映され、工業用金属とエネルギー価格は急激な上昇となりました。

石油価格は、主要産油国が減産計画を発表する中、需要改善の見通しから、11月以来の高値を更新しました。同様に、香港の株式市場は上昇し、中国の動向に敏感な通貨である豪ドルなども恩恵を受けて上昇しました。

例外だったのはカナダドルで、石油価格の高騰から恩恵を得ることはできず、第2四半期のGDP成長率が予想外に縮小したことから、カナダ銀行による利上げ観測が後退して、急激に下落しました。

ゴールドは回復力見せる

ゴールドは先週の金曜日、通常実質利回りと米ドルの上昇に打撃を受けるところ、驚くべき回復力を見せ、ほぼ横ばいで取引を終えました。

ゴールドの上昇には、中国からのコモディティの需要増加か、または中央銀行によるゴールド購入が引き続き需要を下支えしているかが原因となっているようです。どちらにしても、ゴールドが最新の債券や為替市場の犠牲となっていないことは、明るい兆しと言えるでしょう。ただ、ゴールドがテクニカル面で再びポジティブに転換するには、まだ多くの課題が残っています。

本日、米国市場は休場のため、ECBのラガルド総裁による講演が焦点となるでしょう。市場は現在、ECBによる今月の利上げ停止を予想しているようですが、ラガルド総裁がこの見解を裏付けするような発言をする場合、ユーロはさらに下落するかもしれません。

最後に、オーストラリア準備銀行は明日、政策会合が予定されており、金利の据え置きが大方予想されています。