マーケットコメント―重要な米経済指標を前に米ドルは下落基調

投稿日: 2023年8月29日18時05分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・今週の一連の米経済指標を前に米ドル市場には警戒感
・日米金利差から円には引き続き圧力
・FRB議長は今後の利上げを確約せずで米株式市場は上昇

今週金曜日の米雇用統計が焦点

米ドルは昨日、ほとんどの主要通貨に対して反落し、日本円に対してのみ上昇を拡大しました。本日の米ドルは下落または横ばいで取引されています。

ジャクソンホール会議にて、FRBパウエル議長は、利上げの可能性も指摘しつつも、何らかの行動を約束することを避けて、バランスの取れた見解を明らかにしました。この発言を受けて、市場は、今週初めに発表される重要な米経済指標がFRBの将来の行動方針への期待を再形成することになるため、慎重となった可能性があります。

前回のFRB会合での記者会見で、パウエル議長は、今後のデータを見極めて、会合ごとに政策を決定することを明確にしました。それ以来、データは好調な経済を示唆しており、ジャクソンホール会議での議長の発言を受けて、市場は11月までの利上げを約65%とし、来年の利下げ幅を大幅に縮小しました。

今週は、本日JOLTによる米求人件数、木曜日はコアPCE指数とともに、個人所得と消費者支出が予定されています。特に金曜日には、8月の米雇用統計が発表され、注目となるでしょう。

相変わらず堅調な労働市場と粘着性のあるインフレが確認される場合、市場はさらなる利上げを予測し、来年の利下げ幅をさらに縮小する可能性があります。これによって、米国債利回りは上昇し、米ドル上昇となるかもしれません。

コアPCE指数は前年比4.1%から4.2%への上昇予想の一方、賃金の伸びは、8月に前年比4.4%で安定すると予想されているため、ここ数か月で価格圧力が強まる可能性があります。これらの予測は、米ドルを押し上げる可能性がありますが、反対に指標が期待外れとなる場合は、市場の強い反応をもたらし、米ドル下落となる可能性があります。

日本政府による介入の警告なしで円安維持

日本円は一方で、利回り差から打撃を受けて下落しました。昨日米国債利回りは下落しましたが、日銀によるイールドカーブ・コントロールの上限とともに、今週の米経済指標がFF金利の高止まりを示唆すると見られ、この金利差は拡大するかもしれません。

ドル/円は146円台で引き続き取引されており、今年初めから12%ほど上昇しています。日本政府による介入の警告もないことから、市場は現在の水準での介入を警戒していないため、円安となっていると言えます。しかし、おそらく150円辺りとなると、為替介入の可能性も高くなるでしょう。

パウエル議長の慎重な発言から株式市場は上昇

パウエル議長は利上げの可能性を示唆したものの、今後の行動を確約せず、今後の引き締まりに対して慎重に対応すると述べたことで、米株式市場は上昇したようです。金利経路の引き上げにも関わらず、市場は依然として来年末までに0.9%ほどの利下げを織り込んでいることも株式市場を押し上げたのかもしれません。

米株式市場の上昇を牽引している高成長のハイテク企業は、フリーキャッシュフローを割り引いて評価されています。したがって、来年の利下げ観測によって、これらの企業の割引現在価値が上昇しています。

今週の米経済データが好調な場合、来年の利下げ観測が織り込まれている限り、7月27日に始まった株価下落は、広範な上昇トレンドにおける調整と見なされる可能性があります。