マーケットコメントージャクソンホールでの利上げ示唆にもかかわらず、米株価上昇

投稿日: 2023年8月28日19時30分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • パウエル議長とラガルド総裁がインフレ継続見通しを示し、利上げ観測上昇
  • 国債利回りの反応が限定的で米ドルは安定推移、米株価の終値上昇
  • 中国政府が追加刺激策を発表し、株価上昇

パウエル議長の講演はバランスの取れたトーン

ジャクソンホール会議では、若干タカ派寄りながらほぼバランスの取れた金利見通しを示されたことを受けて、本日の市場は安堵と不安の入り交じる中、会議の結果を消化しつつあります。

市場の大半の予想通り、ジャクソンホール会議では昨年のような重要な政策発表はなく、市場の期待には沿いませんでした。2022年のパウエル議長の基調講演では、経済成長を犠牲にしてもインフレを抑制するというFRBの決意を倍増させた後、米国債利回りの力強い上昇が加速しました。現在はインフレ率が約3%まで低下し、今年の焦点は米利上げ完了という待望のシグナル発信でした。

利上げ完了のシグナルは示されず、パウエル議長は追加利上げの余地を明確に残しました。利上げは「慎重に進める」との考えも示されため、市場には若干の安堵が広がりました。

今年のジャクソンホール会議の主要なメッセージは、FRBがどの程度の引き締めが必要かをまだ把握していない為、不透明なインフレ見通しの浮き彫りでした。

パウエル議長のハト派寄り姿勢に株価は冷静に反応

追加利上げへのコミットメントが示されなかったことにより、7月利上げが最後で、次は利下げに移行すると多くの市場参加者は解釈したようです。これを受けて、株高の流れが加速し、S&P 500の終値は0.7%上昇しました。本日の米株価先物指数は、一段と上昇しています。

パウエル議長の発言、及び11月までの利上げの可能性が65%で推移していることから、最後の利上げが0.25%となる可能性が上昇しています。2024年の利下げ観測も若干後退しました。債券市場では、米2年債利回りが5.10%まで一時上昇して最高水準を更新し、その後反落しました。長期国債利回りの反応が限定的であることから、FRBがインフレに適切に対応し、株価にとっては良いニュースと市場は判断しているようです。

景気対策発表にもかからわず、中国株価の上昇勢い失速

中国政府による追加の景気対策発表を受けて、本日の株価は一段と上昇しました。中国の経済指標が脆弱な結果となると、中国政府による追加景気対策が発表されるパターンが最近では定着しつつあります。

本日には、中国7月工業利益での12か月連続での減少が明らかになりました。中国政府は、株式市場を活性化させる為、株式取引の印紙税引き下げ、及び37の新たなリテールファンドの立ち上げを実施しました。更に、より手ごろな価格の住宅建設政策も発表されました。

中国政府の追加の景気対策を受けて、中国の株価は約5%上昇したものの、その後反落し、1.1%の上昇で引けました。したがって、中国政府の景気対策は経済成長には不十分であると市場は判断しているようです。

本日の豪ドルも下落して引けました。明日に発表される中国PMIには市場の関心が集まるでしょう。

ラガルド総裁のハト派寄り発言でユーロは底堅く推移

ジャクソンホール会議でのラガルド総裁のタカ派的発言を受けて、ユーロ/ドルは1.08ドル付近で安定推移しています。9月利上げに関して市場の見解は分かれていますが、賃金上昇を背景に、ラガルド総裁はインフレ継続懸念を示したため、利上げの可能性が高いでしょう。

ポンドに関しては、ジャクソンホール会議でイングランド銀行のブロードベント副総裁が金利は「当面」高水準に留まる可能性を示したにもかかわらず、対米ドルで2か月半ぶり安値1.26ドルを割り込みました。

日銀の植田総裁もジャクソンホール会議に出席し、緩和政策の継続を改めて表明しました。本日の円は若干下落して推移しています。