マーケットコメント―パウエル議長の講演を前に米ドルは強弱混合、ユーロは低調なPMIから下落

投稿日: 2023年8月23日18時13分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

ジャクソンホール会議を前に米ドルは強弱混合
リッチモンド連銀総裁は利上げの再加速を示唆
ユーロ圏のPMIは低下、イギリスのPMIも本日発表
米株式市場はエヌビディアの決算報告に注視

リッチモンド総裁もFRB再利上げの可能性を示唆

米ドルは昨日、他の主要通貨に対して混合強弱で取引されました。しかし本日、ジャクソンホール会議と金曜日のFRBパウエル議長の講演を前に、市場は買いポジションの保有に消極的なようで、米ドルは後退しているようです。

FRBはデータ依存を強調しており、米経済データは前回会合以来、好調さを示唆するデータが続いているため、市場はパウエル議長が、引き締めサイクルの終焉に利上げを示唆するのではと見ています。

この見解は、リッチモンド連銀バーキン総裁が、米経済は減速ではなく加速している可能性も視野に入れるべきだと述べたことからも裏付けされています。バーキン総裁はまた、経済再加速のシナリオは、インフレ率が高いままであった3か月、4か月前には考えられなかったとも述べています。

市場は前回の会合でFRBの利上げサイクルが既に終了したと捉え、現在、約45%の確率で11月の利上げを予想する一方で、来年末までの利下げ幅を縮小しています。パウエル議長がこの金曜日の講演で、前回の会合よりもタカ派となる場合、市場は金利経路をさらに引き上げ、その結果米ドルと米国債利回りは、上昇への勢いが増すと考えられます。

特に、本日予定されている米PMI速報値が米経済の好調さを示す場合は、パウエル議長がますますタカ派となる可能性が高まるでしょう。

ユーロ圏の低調なPMIからユーロ下落、イギリスPMIも本日発表

昨日のユーロは、ユーロ圏のPMI速報値の低下予想から下落しました。本日の発表によると、製造業指数は改善したものの、サービス業が50を下回り、総合PMIを48.6 から47.0に押し下げたことから、市場の懸念が的中したことが証明されました。

ユーロは米ドルに対して新たな安値を更新し、主要なサポートゾーンである1.0830を下回りました。市場は現在、9月での利上げの確率を下方修正して、50%と見ているようです。

イギリスのPMIも低下すると予想されていますが、賃金上昇が著しく、コアCPIレートも依然として7%を維持していることから、イングランド銀行がすぐに利上げを停止するとは考えられません。

イギリスのPMIが予想を下回る場合、ポンド下落の可能性もありますが、市場はイングランド銀行によるあと3回の0.25%利上げを織り込んでいるため、ポンドはユーロに対して上昇し、ユーロは7月11日に更新した1年ぶりの安値である0.8500を下回る可能性があります。

その他では、中国人民銀行が人民元中心レートをロイターの見積もりより1000ピップス以上高く元を設定しました。豪ドルとNZドルは回復モードのままでしたが、中国政府が減速する経済救済のために解決策を検討しない限り、特にパウエル議長が金曜日にタカ派となる場合は、この回復も短期的となる可能性があるでしょう。

エヌビディアの決算報告に大いに期待

S&P500とダウ・ジョーンズは昨日小幅下落となりましたが、ナスダックはやや上昇しました。金曜日のパウエル議長の講演の他、株式市場は、ここ最近の株価上昇を牽引する主力のハイテク大手エヌビディアの決算報告を心待ちにしています。エヌビディアの決算報告は本日米株式市場閉場後の予定です。

エヌビディアは5月にその強気な将来見通しで市場を驚かせ、AIへの期待を大いに高め、自社株だけでなく他のハイテク株の上昇トレンドに勢いを加えました。市場はエヌビディアによる好調な決算報告に大いに期待しており、結果次第では株価が過去最高値を更新する可能性もあります。

しかし、エヌビディアへの期待が誇張される中、今日の決算報告が期待外れの場合、市場の大きな失望となり、株価が大幅に下落するリスクもあります。