マーケットコメントー今週のジャクソンホール会議を前に市場はディフェンス姿勢を維持

投稿日: 2023年8月21日18時47分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

市場はジャクソンホール会議を前に膠着状態
米ドルとゴールド、株式ともにレンジ取引で大きな変動なし
債券利回りに注目-パウエル議長の発言はどのように影響を及ぼすか

ジャクソンホール会議での波乱を前の静けさか?

世界市場は、いくらか不安定な静けさで週明けを迎えているようです。為替市場、株式市場、そしてコモディティにおいて、ほとんどの資産クラスは狭いレンジで取引されており、ボラティリティも低いようです。今週予定されているジャクソンホールでのFRB年次経済シンポジウムを巡って波乱が予期される前に、投資家はポートフォリオ調整に消極的なようです。

ジャクソンホール会議は、主に政策立案者が金融政策や経済トレンドについて意見交換をするために集まる学術的なイベントですが、長年にわたって、FRBメンバーが主な戦略変更を示唆する場となっているため、非公式のFRB政策会合として見る投資家もいるようです。

したがって、金曜日に予定されているパウエル議長の演説が大いに注目されるでしょう。米長期金利が今サイクルにおいて最高水準近くで取引されることが予想される中、金利経路に関する議長の発言は、起爆剤あるいは拒否反応の材料として、全ての資産クラスに大きな影響を与えることになるでしょう。

ジャクソンホール会議でのパウエル議長の発言に注目

パウエル議長が前回のFRB政策会合にて発言して以来、この3週間で米経済の好調さを示すデータが相次いでいます。アトランタ連銀のGDPNow のトラッカーでは現在、主に消費者の回復力の強さから、今四半期での成長を年率5.8%と推定しています。

堅調な労働市場とエネルギー価格の上昇、さらに住宅セクターの復活とともに、近いうちにインフレ率が目標である2%に戻ることが困難との懸念が高まっています。そのため、インフレ率は昨年以降、大きく進展しているものの、パウエル議長がインフレとの戦いの「使命達成」と勝利を宣言するにはまだ時期尚早と言えます。

議長はおそらく、データ依存アプローチを維持して、選択肢を残しておくと見られています。リスクとしては、ここ最近の好調な経済データから、議長が前回よりもタカ派的に、金利を長期にわたって維持することを強調することでしょう。

中国は利下げ、利回り上昇は日本円のみに影響

今週も引き続き、中国経済と利回りの上昇への懸念が市場を取り巻いているようです。本日中国政府は利下げを決定しましたが、これは予想を下回るもので、市場の期待外れとなり、国内の株式市場の下落と豪ドルなど中国経済の動向に敏感な通貨の下落となっています。

中国経済を救済する魔法のような解決策はないことが、明らかになりつつあります。中国の金融・財政当局は巨額な債務から、過剰な刺激策に消極的なようです。国外での債券利回りの上昇とともに、人民元はさらに圧力を受けて下落しており、中国政府は為替介入の強化を余儀なくされています。この現状からの脱出策として、2015年型の人民元の切り下げが考えられますが、これは中国経済の安定化を促すとしても、市場への衝撃を与える可能性が高いと言えるでしょう。

最後に、米利回りは上昇を再開し、名目利回りと実質30年債利回りは本日、一時的にサイクルでの最高値を更新したものの、他の資産クラスに付随的なダメージは発生していないことは驚くべきでしょう。米ドルやゴールド、また株式市場も、少なくとも今のところ、あまり影響はないようです。

ただし日本円だけが、債券市場に影響されているようで、円安は本日さらに進行しています。とはいうものの、円安進行のスピードは、昨年よりもはるかに遅いことから、日本政府による為替介入はまだ先のようです。