デイリーマーケットコメントー米雇用レポート発表で米ドル下落、ゴールド上昇

投稿日: 2023年7月10日18時04分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・米雇用件数は予想を下回り、米ドル下落
・ゴールド上昇も、実質利回り上昇でラリーはいつまで維持できるか
・株式市場は損失でスタート、FRBメンバーの発言に注目

軟調な米ドルは今週の米インフレレポートの結果次第

先週金曜日に、米雇用レポートが発表され、米ドルは打撃を受けました。非農業部門での雇用者数は6月に20万9千件と、予想の22万5千件を下回りました。このため、好調だったADPレポートとISMサービス調査結果を受けて、堅調な数字を期待していた市場の失望となりました。

それにも関わらず、残りのレポートは堅調で、失業率の低下と賃金の伸びへの加速から、米労働市場が依然として活気づいていることが示されています。したがって、この雇用者数から、米ドル軟化への急激な反応を完全に正当化することはできないでしょう。

さらに債券市場では、短期債の米国利回りが低下し、ドルが下落しましたが、10年債利回りが4%を上回ったことで、イールドカーブの末端が上昇しました。10年債が4%を超える度に、特に昨年のイギリスの年金基金と今年3月の銀行危機といった世界経済での悪い前兆となるようで、危険なゾーンであると言えます。

全体としては、この雇用レポートは予想外の結果ではなく、FRBがしばらく利上げを維持するとの憶測が強まり、これが債券市場に反映された形となりました。そのため、米ドルの下落は、過剰反応にも見え、一方的なポジショニングの産物だった可能性もあります。

今週は、水曜日に米インフレレポートの発表が控え、市場の焦点となるでしょう。

ゴールド上昇はいつまで維持できるか

この米ドル下落から恩恵を受けたのは日本円でした。利益確定の波が、ドル/円を押し下げました。日本の利回り上昇は、日銀のイールドカーブの上限に急速に近づき、円高の追い風となりました。

ゴールドも、米雇用レポート発表後に急上昇し、米ドルの後退を最大限に活用しました。しかし、1,935ドル辺りでその上昇は一段落したようです。

ゴールドにとって、今後脅威となるのは、実質利回りの急激な上昇でしょう。米国の実質10年利回りは現在、2009年以来の高水準に近づいており、ゴールドのような利益を生み出さない資産の魅力は低下しています。これまで、ゴールドは底固く推移していますが、特に実質利回りが新しいサイクルの高値を更新する場合、債券市場からの勢いに抵抗するのは難しいかもしれません。

米株式市場も苦戦

株式市場も、利回り上昇からの圧力を感じているようです。先物は本日、わずかな損失からのスタートを示しており、先週の後退が継続することを示唆しています。しかしながら、この後退も今年の株価上昇に続く一時的なものと捉えられます。

今年3月の銀行危機からの流動性の波は、景気後退回避への期待とボラティリティの抑制とともに、株価ラリーの主な推進力となっています。とはいえ、利回り上昇と収益の伸びの停滞にも関わらず、株式市場には飽和状態が起こっており、バリュエーションが上昇しすぎていることを示しています。

流動性のフローが止まり、利回りが上昇する中、株式市場は今後の決算報告シーズンの質にも依存し、調整に対して弱いといえるでしょう。

本日、中国のインフレデータが発表され、製造業の落ち込みを反映して、工場部門でのデフレが深刻化していることが示唆されました。サンフランシスコ連銀デーリー総裁とイングランド銀行のベイリー総裁の発言も予定されており、注目されるでしょう。