デイリーマーケットコメント―米雇用統計の発表を控え、米ドルは一段安

投稿日: 2023年6月2日19時51分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • 賃金上昇率鈍化で、米ドルは下げ幅拡大
  • 米利上げ観測後退
  • 米雇用統計に注目、平均時給に注目

6月据え置き観測上昇で、米ドル一段安

昨日の米ドルは下落幅を拡大させ、全ての主要通貨に対して下落し、本日には殆どの主要通貨に対して下落基調を継続しています。

ジェファーソン理事とフィラデルフィア連銀のハーカー総裁が6月据え置きを支持するハト派寄りの発言をしたことに加えて、経済指標結果も6月利上げへの懐疑的な見方に繋がる原因となりました。

米5月ADP雇用者数は、市場予想を上回る結果となりました。しかしながら、賃金上昇率が前期比で3.2%から4.2%への伸びに留まり、5月4日に発表された上昇率の6.3%からの大幅な下方修正に市場は着目したようです。

7か月連続での低下となった米5月ISM製造業景況指数の結果、及び賃金上昇率鈍化により、6月据え置きムードが市場で広がりました。現在、6月据え置きの可能性が70%で、7月の0.18%利上げが予想されています。

米雇用統計発表、市場は賃金上昇に注目

本日、米5月雇用統計が発表されます。米5月非農業部門雇用者数は25.3万人から18万人への減少、失業率は過去15年で最低水準の3.4%から3.5%への上昇が予想されています。昨日の米5月ADP雇用者数の結果を鑑みますと、米5月非農業部門雇用者数が予想を下回るリスクもあります。

昨日の賃金上昇率への米ドルの反応から判断しますと、市場は雇用者数よりも、賃金上昇に注目する可能性があります。米5月平均時給は4.4%から4.3%に低下する見通しです。米5月ADP雇用者数では賃金上昇率の1%の低下が浮き彫りとなり、米5月ISM製造業景況指数のサブ指標の雇用指数が9%低下しました。したがって、本日の賃金上昇は予想を下回る可能性があります。

賃金上昇の鈍化は、米非農業部門雇用者による米ドル上昇勢いを失速させる要因になり、後日に米ドル下落の要因にも繋がります。しかしながら、最近の米ドル回復の転換と判断するには時期尚早です。

ユーロ/ドルがサポートゾーンの1.0510ドルを割り込まない限り、相場転換の可能性は浮上しないでしょう。先月、ユーロ圏内のインフレ上昇が予想以上に鈍化したにもかかわらず、ラガルドECB総裁は追加利上げの必要性を強調しています。したがって、ユーロ/ドルが下落する可能性は低いでしょう。

米利上げ休止への期待で、米株価の上昇幅拡大

6月据え置きの可能性が上昇する中、7月利上げの可能性も低下しています。昨日、株式のエクスポージャー求めて、一部の投資家が株式を買い足しました。市場のリスクオンの動きが強まり、株式の需要が増加しました。米主要株価指数の終値は全て上昇し、ハイテク銘柄が中心のナスダック指数が上昇を牽引しました。米利上げ休止観測の加えて、AI関連銘柄の急騰が株式の需要増加に繋がっているようです。

本日、財政責任法案が米上院でも可決されたことも、一部の市場参加には好感されました。法案可決はデフレリスクを回避する為、一時的には市場の上昇要因となりますが、債券発行により市場の現金が吸い上げられ、逆効果に繋がります。ナスダック指数は昨年10月の安値から約40%上昇し、今後の下落調整の可能性が拡大しています。